スマートフォン用ページへ

がん総合診療体制

大腸がんの治療

Ⅰ. 大腸がんの基礎知識

1日本におけるがん患者数の推移

大腸がんは増え続けてきました

日本では、大腸がん(結腸がん+直腸がん)は、戦後男女ともに増えて続けてきたがんです。2000年頃から大腸がんにかかる方の人数は横ばいになりつつありますが、患者数では現在でも日本人に多いがんといえます。 大腸がんにかかる方の割合は50歳代から増加し始め、60歳代からピークをむかえ高齢になるほど高くなります。

大腸がんが増えてきた要因

大腸がんが増えてきた要因として、食生活の欧米化の影響が大きいと考えられています。 昔の日本人の食生活は穀物や野菜が主体でしたが、戦後に食生活が肉食中心の欧米式となったため大腸がんが増えてきたと言われています。大腸がんの発生には遺伝的要素よりも、食生活などライフスタイルの影響が大きいと考えられています。

大腸がんは早期であれば完治が期待できる

一方、大腸がんの死亡数は大腸がんにかかる方の約半分です。これは大腸がんの生存率が比較的高いことを意味しています。
このように、大腸がんは、早期であれば完治を期待することができるがんですが、一般的には早期では自覚症状はありません。そのため定期的な検診により、大腸がんを早期に発見することが大切なのです。

グラフ

2大腸がんの原因

《食生活の欧米化》

日本人の食生活は穀物や野菜・魚中心の食事から、近年急速に欧米化し、肉や油などのたんぱく質や動物性脂肪分が多い食事に変化しました。また野菜の摂取量が減ることで、食物繊維が不足気味になってきています。 動物性脂肪を大量に摂取すると、それを分解するために胆のうから胆汁がたくさん分泌されますが、胆汁に含まれる胆汁酸の中には、発がん性のある物質もあります。これが大腸内に長くとどまると、大腸がんが発生しやすくなるのです。 このように高脂肪・低繊維食が大腸がんのリスク要因とされています。

《高齢化》

がんは、免疫力が低下してくる60歳以降にかかりやすい病気といわれています。そのため、高齢化が進んでいる日本では大腸がんも増えているのです。

この他にも肥満、飲酒、喫煙も大腸がんのリスク要因とされています。

3大腸がんの症状

大腸がんの症状は、大腸のどの部分に、どの程度のがんができるかによって異なります。多い症状としては下記のとおりです。

代表的な症状:血便・便が細くなる・便秘・残便感・腹痛・腹部膨満感・貧血

ただし、早期の大腸がんの多くは無症状ですし、進行したがんでも無症状のことがあります。
無症状であっても定期的に検診を受診することが大切です。
また、上記のような症状が現れた場合にはすぐに医療機関を受診しましょう。

4大腸の機能と構造

《大腸の機能》

大腸の主な働きは、小腸で栄養を消化・吸収された腸液から水分や電解質などを吸収して糞便を作り肛門まで運ぶ役割があります。この水分吸収はとくに上行結腸と横行結腸で行われ、下行結腸とS状結腸は糞便の貯留に大きな役割を担っています。

《大腸の構造》

大腸は結腸と直腸に分類され、結腸はさらに盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に、直腸はさらに直腸S状部、上部直腸、下部直腸に分けられています。 また大腸がんの発生場所として多いのは、S状結腸と直腸と言われています。

5大腸がんの発生と進行

大腸がんは大腸粘膜が何らかの原因でがん細胞に変化し、がん化した細胞が何兆という数に増えて目に見える大きさとなります。粘膜下層までのがんを早期がん、筋肉層より深く進展したものを進行がんと呼びます。

また、がんが最初に発生したところから違うところに飛んで成長することを転移といいます。大腸がんの広がり方には浸潤、リンパ行性転移、血行性転移、腹膜播種があります。

・浸潤

大腸がんは粘膜から発生し、腸の壁を破壊しながらだんだん大きくなり、最後に腸の壁を突き破って周囲の内臓にまで広がっていきます。このがんの広がりを浸潤といいます。

リンパ行性転移

がん細胞が腸の壁の中にあるリンパ管に侵入し、途中にあるリンパ節の中で増殖します。リンパ節転移の仕方には一定の法則があり、まず近くのリンパ節に転移を生じて次第に遠くのリンパ節へと広がっていきます。

・血行性転移

がん細胞が腸の壁の中にある細い静脈に侵入し、血液の流れに沿って大腸から離れた臓器へ移り大きくなります。大腸がんの場合、肝臓や肺に転移する割合が多く、もっと進むと骨や脳に転移します。

・腹膜播種

増大したがんはやがて腸の壁を突き破ってお腹を覆う腹膜に顔を出します。そこからがん細胞がはがれて種をまくように腹腔内にばらまかれて大きくなり、腸が狭くなったり腹水がたまったりすることがあります。

大腸がんの発生と進行

ページトップへ

Ⅱ. 大腸がん検診について

大腸がんは、早期では自覚症状が出ることは少なく、またかなり進行しても無症状の場合があります。また、大腸がんは、早期であれば完治を期待することができるがんです。
そのため早期発見・早期治療をするためにも定期的に検診を受けることが最も重要なことです。

主な大腸がん検診の検査

川崎市の大腸がん検診では、便潜血検査を受けることができます。

①便潜血検査

がんやポリープなど、大腸に異常があると大腸内に出血することがあります。便潜血検査は便の中に大腸から出血した血液が混じっていないか検出する検査です。この検査は、食事制限なく比較的簡単に受けられる検査です。 便潜血検査が陽性になった場合には、大腸からの出血の原因を明らかにするために大腸内視鏡などの精密検査を受けていただく必要があります。

②大腸内視鏡検査

便潜血検査で陽性となった場合の精密検査として、大腸内視鏡検査が用いられます。大腸すべてを内視鏡で直接観察するため、がんやポリープを診断する精度が非常に高いのが特徴です。
川崎幸病院では、苦痛のない大腸内視鏡検査ができるように、常に高い意識をもち、専門的な内視鏡診断で地域医療に貢献できるように日々診療しております。

ページトップへ

Ⅲ. 大腸がんの進行度分類

大腸がんの進行度は、ステージ0からステージⅣまでの5段階に分類されています。治療法を決めるためには、まず、がんがどれくらい進行しているかを精密検査などで調べ、正しく把握することが大切です。
がんの深さ、リンパ節転移、他の臓器の転移により進行度が決定されます。手術所見と切除した病巣と郭清したリンパ節を顕微鏡でくわしく調べることで後日決定されます。これらの進行度が、完全に治る確率とその後の経過観察や補助療法の目安となります

大腸がんの進行度分類

ページトップへ

Ⅳ. 大腸がんの治療について

大腸がん治療は、がんの進行度(ステージ)を診断し、各ステージに合った最適な治療を行うことが大切です。
川崎幸病院では、ステージ診断および治療法の選択については大腸癌治療ガイドラインおよび大腸癌取り扱い規約に沿って判断をし、最新かつ標準的治療を行っています。
また、治療法を選択するのは、患者さんとご家族です。あくまでも患者さん・ご家族の選択(セルフディシジョン)を尊重し、ご理解・納得いただけるまで充分にわかりやすく説明をさせていただいております。

大腸がんの治療について  大腸がんの治療について
 大腸がんの進行度と治療適応

あくまでも標準的な治療適応の目安になります。
患者さんの状態に合わせて、最適な治療をご提示いたします。

  • ステージ0
  • ステージ1
  • ステージ2
  • ステージ3
  • ステージ4
内視鏡的粘膜切除術(EMR)

がんがそれほど進行していない早期の段階ですので、おなかを切らずに、内視鏡を肛門から入れて、がんを切り取る治療を行ないます。内視鏡治療は、体への負担が比較的軽く、入院期間が短いなどの利点があります。 場合によっては、手術が必要となることもあります。

治療適応ステージ: ステージ0、ステージⅠ(軽度浸潤)

▲大腸がんの治療について

外科手術

外科手術の適応となるのは、上記の内視鏡的治療の適応とならない早期大腸がんと進行大腸がんです。
手術のアプローチには、開腹手術と腹腔鏡下手術があります。当院の方針として腹腔鏡下手術は早期がんと一部の進行がんを適応とし、漿膜浸潤陽性や腫瘍が大きい場合、腸閉塞を生じている場合には開腹手術を選択しています。
手術では、まず肝臓や腹膜転移の有無を、次に大腸がんの深さや浸潤とリンパ節転移の程度や範囲を観察します。根治的手術が可能であると判断した場合には、周囲のリンパ節とともに大腸を切除します。リンパ節をとる範囲は、最終的に手術中の所見によって決定します。根治的手術が困難でがんに伴う出血や狭窄症状があるか予測される場合には、緩和的手術として腫瘍を切除するか、便の通り道を確保するバイパス手術を行います。

大腸がん手術の術式

結腸切除術

結腸がんの場合には、一般に腫瘍から5~10cm離れた部位で腸管を切ってリンパ節と共に腫瘍を切除します。

結腸切除術

括約筋温存術・直腸切断術

直腸がんの場合には、一般に腫瘍から2~3cm離れた部位で腸管を切ってリンパ節と共に腫瘍を切除します(括約筋温存術)。がんが肛門の近くにある場合には、がんを取りきるために肛門を残せないことがあります。その場合、肛門を含めてがんを切除して永久の人工肛門を造設することとなります(直腸切断術)。

括約筋温存術
括約筋温存術
直腸切断術
直腸切断術
リンパ節郭清

一般に粘膜がんはリンパ節転移を生じることはありません。粘膜下層癌では約10%の頻度でリンパ節転移を生じるためD2郭清を行っています。進行がんではD3郭清を行います。下部直腸進行癌では、リンパの流れが骨盤側方にもあるため側方リンパ節郭清を行うことがあります。

リンパ節郭清

▲大腸がんの治療について

大腸がん手術のアプローチ法

腹腔鏡下手術

お腹に2~10mm程度の小さな孔(あな)を1~4か所ほど開け、カメラでおなかの中の様子を映像モニターに写しだし、この画面を見ながら特殊な器具を使って行なう手術です。 お腹を大きく切開する開腹手術に比べて手術による創が小さいため身体への負担が少なく、手術後の回復が早いため早期の社会復帰が期待できます。 また最近では単孔式鏡視下手術やRPS(Reduced Port Surgery)といって、お腹に開ける孔の数を減らし、手術後の感染症のリスクを減らし、術後の回復が早い術式を積極的に導入しています。 腹腔鏡下手術は早期がんと一部の進行がんを適応としています。

腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術

治療適応:
早期がんと一部の進行がん

▲大腸がんの治療について

開腹手術

お腹を切開して、腫瘍の切除とリンパ節の切除を行う方法で、多くの大腸がんに対して行われる手術方法です。

▲大腸がんの治療について

腹腔鏡下手術と開腹手術の術後創の比較

腹腔鏡下手術は、開腹手術と違いお腹を大きく切開しませんので、写真のように術後の創が小さくきれいです。また、創が小さいため身体への負担が少なく、早期の社会復帰が期待できます。

腹腔鏡下手術

開腹手術

▲大腸がんの治療について

化学療法(抗がん剤治療)

お腹を切開して、腫瘍の切除とリンパ節の切除を行う方法で、多くの大腸がんに対して行われる手術方法です。

術後補助化学療法

大腸がんは、早期発見の場合、そのほとんどは手術によってがんを切り取ることができますが、なかには再発してしまうこともあります。これは、目に見えない大きさのがん細胞が、からだのどこかに残っているからだと考えられています。 そこで、再発の可能性を少なくするために抗がん剤を用いて残っているがん細胞を攻撃して、やっつける治療を行います。手術の補助的な役割を担うことから、これを「術後補助化学療法」といいます。 術後補助化学療法を行うと、手術後に何もしない場合と比べ、再発の可能性を10~15%減少させることがわかっています。 大腸がんの術後補助化学療法に用いるお薬は、目に見えないがん細胞を攻撃して死滅させ、その増殖を防ぐ働きがあります。しかし、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を与えてしまうことがあるため、あなた自身によくない影響(副作用)があらわれることもがあります。 一般に術後補助化学療法は6ヶ月間行います。

全身化学療法

がんが周囲の臓器に直接浸潤していたり、その他の臓器に多発性の転移(再発)が認められ、手術だけではがんをすべて取り除くのが難しい場合、一般的な治療法として、全身化学療法を選択します。 全身化学療法を用いることで、がんの進行を遅らせたり、がんの大きさの縮小やがんに伴う炎症の軽減などによりがんの症状を緩和させることが期待でき、生活の質(Quality of Life)の向上をはかることができます。 しかし、化学療法に用いる抗がん剤は、がん細胞を攻撃する働きがありますが、その作用は、がん細胞だけでなく正常な細胞にもおよぶため、そのダメージがいろいろな副作用となって現れます。がん化学療法においては、副作用は避けて通れないものですが、副作用の発現をできるだけ抑えながら、効果を最大限に引き出すよう対応していきます。

放射線治療

術前放射線治療

放射線治療単独で行われることもありますが、最近は放射線治療と化学療法を組み合わせた化学放射線療法が行われています。 手術前に化学放射線療法を行うことで、がんの広がりを小さくしてから手術を行うことで、手術後の再発率は低くなります。さらに、手術だけの治療法では人工肛門になっていたケースでも、肛門を温存できる可能性が高くなります。

術前放射線治療 術前放射線治療

術後放射線治療

がんの状態によっては、手術後に放射線治療を行うことがあります。

▲大腸がんの治療について

ページトップへ

Ⅴ. 手術後について

大腸がんの手術を受けられた患者さんには、再発予防などのためにも、通常手術後5年間、定期検査を受けていただく必要があります。
当院で治療を受けられた患者さんには診療記録手帳を退院時にお渡ししています。
この手帳には、患者さんの病状・治療内容などの診療情報、今後5年間の診療(定期検査など)の予定表、定期検診日の診療内容の記録、術後の注意点についての説明を記載してあります。

大腸がん診療記録手帳

大腸がん診療記録手帳
ダウンロード