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診療科のご案内

 
 

大動脈の病気について

大動脈瘤と診断されたら
  1. 正確な診断・治療方針を聞くこと
    大動脈治療に実績のある専門病院を受診してください(医師の診断・治療能力に大きな差があります)。大動脈瘤の大きさ・部位について正確な診断が必要です。診断はCT検査によって行います。検査結果を総合して、治療方針が決まります。
  2. セカンドオピニオンを受けること
    大動脈瘤は破裂・急性解離を除けば緊急手術になることはありません。診断・治療方針の決定は慎重に行う必要があります。セカンドオピニオンを受け、ご自身が十分納得した上で治療を受けることが大切です。
  3. 治療実績のある病院を選ぶこと
    治療成績は治療実績の多い病院が優れています。必ず治療実績(治療件数・手術件数等)をホームページなどで確認してください。大動脈瘤の治療件数が年間100例以下の病院は避けてください。年間500例以上の病院は十分な実績があります。
大動脈とは

大動脈は心臓(左心室)の大動脈弁から始まり、上行大動脈(冠動脈を分岐)・弓部大動脈(腕頭動脈・左総頸動脈・鎖骨下動脈を分岐)・下行大動脈(肋間動脈を分岐)・腹部大動脈(腹腔動脈・上腸間膜動脈・左右腎動脈を分岐)と続き、両側総腸骨動脈へと分岐します。 内膜・中膜・外膜の三層構造で成り、直径は2~3cmです。大動脈は主要分枝を介して重要臓器に血液を供給する機能を持っています。

大動脈疾患の概要

大動脈の構造は3層構造で直径は2~3cmです。大動脈疾患の主なものには大動脈瘤と大動脈解離があります。
これらの疾患はしばしば混同されますが別の病態です。大動脈疾患を指摘されたら、この二つの疾患をはっきりと分けて考える必要があります(別々の疾患ですが、大動脈瘤に大動脈解離を伴う場合、大動脈解離に大動脈瘤を伴う場合があります)。

大動脈瘤とは、この大動脈が種々の原因により拡大し、一定の大きさ以上になったものです。大動脈解離とは3層構造の一部が剥がれて、大動脈壁が2重に避ける病態です。

大動脈瘤には真性大動脈瘤および仮性大動脈瘤がありますが、患者さんで問題となるのは真性大動脈瘤がほとんどです。大動脈瘤は数年から数十年かけてゆっくり拡大し、5cmを超えると治療が必要になります(一部の嚢状瘤と呼ばれているものは大きさにかかわらず治療が必要です)。 症状はありませんが、拡大を続けると痛みが出る場合があり(切迫破裂)、そのまま放置すると破裂し死亡します。

大動脈解離には急性と慢性の大動脈解離があります。急性は突然激痛を伴い発症します。適切な治療を行わないと重篤な合併症や死亡を伴う極めて予後不良な疾患です。 急性期に適切な治療を行い一定期間が経過したものは慢性大動脈解離となり、その後の継続治療により予後が左右されます。

大動脈瘤
  1. 発症
    大動脈瘤は一部の遺伝性のものを除き、加齢とともに発症し、数年あるいは数十年を経過し大動脈が拡大してきます。発症年齢は40歳代からですが、最近は30歳代の発症も増加しています。一般的には60〜70歳代からの発症が多く見られます。
    大動脈瘤はほとんどの場合無症状で経過します。大動脈瘤が5cmを超えて拡大した場合、周辺臓器の圧迫症状や血管自体の切迫破裂による症状が出る場合がありますが、これらは稀ですので症状の有無で判断することは大変危険です。
  2. 原因・分類
    多くの場合は加齢に伴う大動脈壁の変性(動脈硬化等)が原因とされています。したがって、動脈硬化の危険因子です。
    高血圧・糖尿病・肥満・喫煙習慣など生活習慣病の原因とされているものの多くは大動脈瘤の原因と関係があります。大動脈瘤は発生部位により、上行大動脈瘤・弓部大動脈瘤・下行大動脈瘤・胸腹部大動脈瘤・腹部大動脈瘤に大別されます。 また形態により、真性動脈瘤(紡錘状・嚢状)・仮性動脈瘤に分類されますが治療上の違いはほとんどありません。
  3. 症状
    大動脈瘤のほとんどは無症状です。症状がなくても大動脈瘤の診断を受けた場合は重症と考えてください。有症状のものの代表は、弓部大動脈瘤に伴う反回神経麻痺(嗄声;声がかすれる)があります。 また、食道や気管を圧迫することによる症状が出る場合がありますが、これは大動脈瘤がかなりの大きさになった場合であり、治療時期を大幅に逸脱している状態です。何れにしても症状が出たものについては可及的早期の治療(準緊急手術)が必要となります。
  4. 診断
    大動脈瘤の診断はCT検査で行います。より正確な診断には造影CT検査が必要です。腹部大動脈瘤の場合には腹部超音波検査でもある程度の診断はできますが(大動脈瘤の有無程度)、治療方針の決定には胸部・腹部大動脈瘤ともに造影CT検査が必要です。 MRI検査でも診断できますが、造影CT検査の方が治療上必要な情報は多く得られます。
  5. 治療
    全ての患者さんの状態により異なり、病態・部位・大きさ・合併症・年齢・全身状態等の条件により、それぞれの患者さん毎に手術治療(人工血管置換)・ステント治療・ハイブリッド治療・内科治療を組み合わせて行います。 治療方法の決定には医学的エビデンスと個々の患者さんの条件・状態を考慮し決定されます。一般的には上行大動脈瘤(人工血管置換)、弓部大動脈瘤(人工血管置換)、 遠位弓部大動脈瘤(人工血管置換・ステント治療・ハイブリッド治療)下行大動脈瘤(ステント治療・人工血管置換)胸腹部大動脈瘤(人工血管置換)、腹部大動脈瘤(ステント治療)となります。また、若年者には人工血管置換、高齢者にはステント治療を行う場合があります。
大動脈解離
  1. 発症
    大動脈解離の発症は大動脈瘤とは対照的に激痛を伴い突然発症します。前駆症状(予兆)はありません。労作時・安静時の区別もなく、また発症の時間帯も不定で突然発症します。稀に無症候性の大動脈解離がありますが、発症しても自覚症状がないため突然死する場合があります。 発症時は急性大動脈解離ですが、一定時間を経過したものは慢性大動脈解離となります。
  2. 原因・分類
    決定的な原因は不明ですが生活習慣病のリスクが示唆されます。近年若年性大動脈解離が激増していますが、特に肥満・高血圧等の生活習慣病に関連した患者さんが多く認められます。 分類方法は急性・慢性およびA型解離(上行・弓部大動脈に解離があるもの)・B型解離(上行・弓部大動脈に解離がないもの)に分類します。
  3. 症状
    最初は胸痛または背部痛で発症し、時間経過(多くは1時間から数時間)に従って激痛の部位が腹部または腰部へ移動します。また、痛みは時間経過とともに軽快する場合がありますが、痛みが軽快しても病態は進行しています。 発症を経験した患者さんはしばしば「今までに経験したことのないような激痛」を訴えます。しかし、疼痛の感じ方には個人差があり、また時間経過とともに経過する場合があるので激痛でないからといって急性大動脈解離を否定することは危険です。
  4. 診断
    大動脈解離の診断は大動脈瘤と同様にCT検査で行います。より正確な診断には造影CT検査が必要です。造影CTにより解離の部位・進展度、分枝血管の状態、主要臓器の虚血性変化、真腔・偽腔の状態を診断します。
  5. 治療
    それぞれの患者さん(病態および時期)により複数の治療法から適切な治療を選択します。一般的な治療法の概要を以下に示します。
    急性A型解離:緊急手術(上行部分弓部人工血管置換)
    急性B型解離:内科的(保存的)治療またはステント治療
    慢性A型解離:待機手術(上行弓部人工血管置換)または経過観察
    慢性B型解離:大動脈瘤となっていない場合は経過観察
大動脈疾患に対する治療方法の概要
  1. 手術治療(人工血管置換手術)
    化学繊維を使用したダクロン人工血管を使用し、病変のある大動脈を人工血管に置き換える手術です。化学繊維を使用しているため生体に対する拒絶反応は起こりません。耐久性は保障されていて耐用年数については半永久的耐久性がありますから、一度置換した人工血管を再度入れ替えることはありません。
    人工血管置換には、体外循環装置を使用する方法/使用しない方法、心臓を一時的に止める方法(完全体外循環法)/止めない方法(左心バイパス法)、体温を下げて手術を行う方法(低体温)/下げない方法(常温)など、いろいろな手技を組み合わせて行います。
  2. ステント治療(ステントグラフト内挿手術)
    人工血管に自然拡張性のあるスプリング(ステント)を組み合わせたものを用い、カテーテルを使用して動脈瘤の内側にステントグラフトを留置する方法です。開胸・開腹操作や人工心肺装置を使用しないため、一般には体に対する負担が少ないと言われています。 しかし、ステント治療が可能な病態が限られていることや、部位によっては手術治療よりも合併症が多い場合があります。また、耐久性(再発の可能性)が人工血管置換手術よりも劣るなど、手術治療との優劣は決められず、ステント治療の選択には専門的な判断が必要です。
  3. ハイブリッド治療(人工血管とステントグラフトの併用)
    手術治療とステント治療を組み合わせた治療方法です。広範囲にわたる大動脈病変に対する治療や、部分的な癒着を伴う再手術などに用いられることがあります。
  4. 内科的治療
    手術治療あるいはステント治療の対象とならない大動脈疾患あるいは現時点では拡大が少なく手術適応とならないものに対して、病態の進展を抑制することを目的として内科的治療を行う場合があります。
疾患別治療法

ここで述べる治療法は主に一般的治療法です。患者さんの病態は様々であり、また治療条件も異なります。実際の治療方法は患者さんの状態により細かく治療計画を立て、それにしたがって進められます。