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診療科のご案内

 
 

ステントグラフト治療の流れ

ステントグラフト内挿術の実際

2006年7月に腹部大動脈瘤用のステントグラフトが、2008年4月には、胸部大動脈瘤用のステントグラフトが、厚生労働省よりそれぞれ薬事承認され保険適応となりました。 海外で普及していたステントグラフトによる治療を日本で開始するに際し、関連する学会から構成される「日本ステントグラフト内挿術実施基準管理委員会」にて、この治療を安全に実施するための基準が設定されました。当院はその基準に適合した、ステントグラフト実施の認定施設です。 当院でのステントグラフト治療は、2008年より指導医を招聘して、始まりました。2012年に現在の病院に移転してからは、血管撮影装置が装備された専用のハイブリット手術室を使用して、血管内治療を専門とする常勤医で構成される専属チームが実施しております。 以後、年間の症例数は増加傾向で、2016年にステントグラフト専属チームが現在の大動脈外科に合併してからは、年間症例数が200例を超えております。
当大動脈センターにおいては、解剖学的適応を遵守した、標準的なステントグラフト内挿術を安全に実施することを原則としています。解剖学的適応は、大動脈もしくは腸骨動脈の部位により異なります。

検査及び手術入院

外来にて手術の方針が決まりましたら、検査入院を経て、手術入院となります。検査入院の目的には二つあります。ひとつは、外来では施行が難しい、または入院のうえで行う方が好ましい検査を行う為です。 主に心臓の血管である冠動脈を評価するための血管撮影、他に腎機能やヨード造影剤アレルギーの問題がある場合に行う造影CTの検査です。
検査入院のもう一つの目的は、手術の詳しい説明をする為です。外来では時間に制約があるため、手術の詳しい方法やリスクを十分に説明する時間を取れません。 従って、検査入院時に手術の方法やリスクを十分説明して、ご本人及びご家族さまの理解が得られてから初めて、手術に対する同意を頂いております。 検査入院は2泊3日や3泊4日で調整しますが、透析を必要とする場合や、連続して検査を行わない方が良い場合は少し長くなります。
手術入院は、検査入院が済んでいる場合は、手術の前日に入院して頂きます。

退院後について

退院した直後は自宅療養して頂けますと、あとは普段通りの日常生活に戻れる場合がほとんどです。運動なども今までと同様に行って頂いても、ステントグラフトの位置が変わるなどの心配もございません。注意点としては、「血圧を適正値に保つこと」「禁煙を厳守すること」です。
長期的には、当センターのステント外来にて定期的にCTを撮影して、腹部大動脈瘤の大きさの変化を経過観察します。また、胸部大動脈や腸骨動脈に病変がないかも同時に見ていきます。 外来での検査は、造影剤を使用しないCTと採血が基本ですが、状況に応じて、超音波や下肢血圧などの生理検査やMRI撮影などを追加する場合や、腎臓の機能が許せばヨード造影剤を使ったCTを撮影する場合もございます。
血管内治療後の最初の1年間は、退院後3か月、6か月、1年とたびたび通院して頂きますが、経過が順調であれば以後は1年毎の外来通院となります。遠方などの理由で外来通院がやや困難な場合は、近医にCTの撮影を依頼して、データをご家族さまが持参して、外来での診療を行う場合がございます。 その理由は、ステントグラフト内挿術を施行した後は、長期的な経過観察が必要となり、CT画像においては、瘤の大きさだけではなく、ステントグラフトと血管壁との位置関係を専門的な視点で判断する必要があるからです。

腹部大動脈瘤に対する腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)

腹部大動脈瘤の多くは、腎動脈分岐下に生じますが、腎動脈分岐部や分岐上の大動脈が瘤化している場合は開腹手術の方針としています。また、腸骨動脈瘤が同時に存在する場合も多く、その場合は、以下の腸骨動脈ステントグラフト内挿術と組み合わせた、血管内手術の方法を検討します。

  1. 腹部大動脈瘤の手術適応
    腹部大動脈瘤が5cmを超えた場合は、破裂リスクを考慮して、手術を検討します。また、径4.5cm-5cmの腹部大動脈瘤でも、長期の生命予後が見込めて、手術リスクが高くない場合は、手術を検討します。 手術を人工血管置換術または腹部ステントグラフト内挿術にするかの選択は、年齢や解剖の他、併存疾患を含めた手術リスクを総合的に判断して、症例ごとに方針を決めております。
  2. 腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)の適応
    • ステントグラフトを挿入する経路となる大腿動脈および腸骨動脈が、挿入に適した状態であること。
    • ステントグラフトを固定する健康な大動脈部分が、以下のような状態であること。
      ①長さが一般に15mm 以上あること。
      ②外径が18mm程度 以上28mm 程度以下であること。
      ③動脈瘤のある大動脈部分との角度が60 度以内であること。
      ④腎動脈より上の部分の大動脈との角度が45 度以内であること。
    • ステントグラフトの脚を固定する腸骨動脈の長さが10mm以上、血管径が7-20mm程度。
  3. 腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)の血管内手術
    手術中の麻酔は、全身麻酔を原則としております。その理由は、実際はほとんどありませんが、術中トラブルによる開腹手術への移行の可能性を考えているからで、併存する他の病気のため全身麻酔のリスクが高い患者さまの場合は、硬膜外麻酔で行います。
    麻酔の導入が終了したら、一般的な外科手術に準じた方法にて、両側の大腿部から下腹部まで術野を確保します。EVARの手術では、両側の鼡径部を走る動脈(総大腿動脈)よりカテーテルと呼ばれる管類を挿入していく為、初めに片方の鼡径部を切開して、鼡径部の動脈を露出します。 反対側の鼡径部は、穿刺といって皮膚の表面より針を刺して動脈壁に直に穴を開けてからカテーテルを挿入していく操作で行います。
    血管内治療は、左右鼡径部の動脈に、それぞれシースという管を挿入することから、始めます。シースが挿入されたら、様々なガイドワイヤーやカテーテル類を鼡径部の血管へのストレスなく何回も挿入する事が可能となります。 まず、腹部大動脈を撮影して、実際に留置するステントグラフトのサイズを決定します。ステントグラフト本体の準備を終えたら、鼡径部の動脈から挿入して腹部大動脈まで進めて、ステントグラフト本体を展開していきます。 ステントグラフト本体の展開が終えたら、ステントグラフトを収納していたシステムを抜去して、鼡径部の動脈から出血しない様にサイズの大きなシースという管を挿入します。 次に、ステントグラフト本体を挿入した方と反対側の鼡径部の動脈から、ステントグラフトの脚部分を挿入していき、展開して脚部分を延長します。 ステントグラフトの展開及び留置が終えたら、バルーン付きのカテーテルを挿入して血管の内側より、ステントグラフトを圧着してから血管撮影を行って、大動脈瘤内への漏れ(エンドリークと呼ぶ)が無いかを判断して、必要に応じて、ステントグラフトを追加します。 手術の最後に、鼡径部の血管から管を抜いてから、皮膚を切開した方は血管壁を縫合して、皮膚を閉創します。皮膚を切開してない方は、止血用の器具を血管壁に導入してから血管内手術の全ての手技が終了します。
    血管内手術の手技が終了した時点で、通常は麻酔から覚醒させて、人工呼吸器に接続していた気管内挿管を抜管してから集中治療室または一般病棟に帰室します。手術時間も短いため、トラブルなく手術が終了した場合は、一般病棟でも術後管理が可能です。
  4. 腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)後の経過
    血管内手術の当日は、術後に集中治療室でベッド上での安静になりますが、翌日からは病棟内を歩行可能となります。ステントグラフトが適切に大動脈に留置されると、大動脈瘤内の血流が停滞して血栓化が始まるため、治療の翌日から熱発や倦怠感・食欲不振が生じる場合があります。 但し、数日すると発熱は微熱程度に落ち着いてきて、倦怠感も回復してくるのが通常の経過です。また、鼡径部の傷も小さい為、創部の痛みも軽く、術後3日目からシャワー浴が可能となります。 従って、経過が順調な場合は、治療後3日目にCT撮影を行って治療が予定通りに出来ているかを確認して、治療後4~7日で退院になります。
EVER 手術前

EVER 手術後

腸骨動脈瘤に対するステントグラフト内挿術

腸骨動脈は、総腸骨動脈及び内腸骨動脈で瘤が生じやすく、両側性に生じる場合も稀ではありません。 また、腸骨動脈瘤が腹部大動脈瘤と同時に見つかる事も多く、一つの瘤だけが治療適応でも、残存する瘤が将来的に治療適応になる可能性が高い場合は、同時に治療する方針としております。 また、治療適応となる一つの瘤だけに対するステントグラフト内挿術が解剖学的に困難な場合も、同時に治療する方針としております。この場合、前項で説明した腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)と、本項で説明する腸骨動脈ステントグラフト内挿術を組み合わせた血管内手術となります。

  1. 腸骨動脈瘤の手術適応
    総腸骨動脈瘤または内腸骨動脈瘤の直径が、30mmを超えた場合は破裂リスクを考えて手術を検討するのが一般的です。 腹部大動脈瘤がない場合の腸骨動脈瘤は、孤立性の腸骨動脈瘤と呼ばれており、解剖学的な条件を満たせば、腸骨動脈に脚と呼ばれる直線型のステントグラフトのみを留置する腸骨動脈ステントグラフト内挿術が可能となります。
  2. 腸骨動脈ステントグラフト内挿術の適応
    総腸骨動脈瘤の場合は、瘤より近位側の総腸骨動脈の長さが15mm以上で、かつ血管径8mm-13mm程で、ステントグラフトの中枢側が固定できることが条件となります。
    内腸骨動脈瘤の場合は、総腸骨動脈の長さが15mm以上で、血管径8mm-13mm程でステントグラフトの中枢側が固定できることが条件となります。
  3. 腸骨動脈ステントグラフト内挿術の血管内手術
    腸骨動脈ステントグラフト内挿術は、ステントグラフト脚のみを留置するため、穿刺といって皮膚を切開して動脈を露出することなく、血管内治療を行える利点がありますが、麻酔は原則的に全身麻酔となります。 また、直型のステントグラフト脚を総腸骨動脈から外腸骨動脈に連続して留置するだけでは治療は不完全で、内腸骨動脈からの血流が腸骨動脈瘤に流れない様にするため、内腸骨動脈にコイルを詰めて血管を閉塞する手技(内腸骨動脈コイル塞栓術)を最初に行う必要があります。 この内腸骨動脈コイル塞栓術は、局所麻酔でも安全に行える血管内治療です。従って、合併する疾患のために全身麻酔が長くなることがリスクとなる場合は、検査入院時に内腸骨動脈コイル塞栓術を行います。 また、腎機能が悪いために、1回の血管内治療で使うヨード造影剤の量を減らしたい場合も、検査入院時に内腸骨動脈コイル塞栓術を行います。 その他に、左右に腸骨動脈瘤があり、左右とも内腸骨動脈コイル塞栓術を行う必要がある場合は、検査入院時に片方のみ行ってから、ステントグラフト内挿術の時に反対側を行います。
    腸骨動脈ステントグラフト内挿術は、腸骨動脈瘤がある方の太もも付け根(鼡径部)を穿刺して、シースと呼ばれる管を挿入して始めます。シースを通じて、様々なガイドワイヤーやカテーテル類を挿入部の血管にストレスなく挿入することが可能になります。
    血管内手術の手技が終了した時点で、通常は麻酔から覚醒させて、人工呼吸器に連結していた気管内挿管を抜管してから集中治療室または一般病棟に帰室します。手術時間も短く、術中トラブルなく手術が終了した場合は、一般病棟でも術後管理が可能です。
  4. 腸骨動脈ステントグラフト内挿術後の経過
    血管内手術の当日は、術後に集中治療室でベッド上での安静になりますが、翌日からは病棟内を歩いて頂きます。この際、内腸骨動脈コイル塞栓術後の影響により、臀部から太ももにかけて疲労症状(臀筋跛行と呼ぶ)が高頻度で出現します。 症状が強く出る人は、病室からトイレに行ってから戻るまでの間に自覚する人がいますが、全く症状が出ない人まで個人差があります。 症状が出現した場合でも、最初の数日間は一日ごとに症状は軽減することが多く、4-5日経過すると通常は数百メートル歩行しても症状は軽度でおさまるまで改善してきます。 また、金属コイルを血管内に留置するため、治療の翌日から熱発や倦怠感・食欲不振が生じる場合がありますが、数日すると微熱程度に落ち着いてきて、食欲も回復してくるのが通常の経過です。従って、問題なく経過した場合は、治療後3-5日程度で退院可能となります。
胸部大動脈瘤に対する腹部ステントグラフト内挿術(TEVAR)
  1. 胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)の適応
    胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)は、下行大動脈瘤が手術適応となった場合に検討されます。TEVARの適応は一般的に以下の条件を満たす他に、年齢やその他の手術リスクを考慮して、判断します。
    • ステントグラフトを挿入する経路となる大腿動脈および腸骨動脈が、挿入に適した状態であること。
    • ステントグラフトを固定する健康な大動脈部分が、以下のような状態であること。
      ①長さが一般に20mm 以上あること。
      ②外径が20mm程度以上38mm程度以下であること。
      ③大動脈瘤の末梢の胸部大動脈が過度に屈曲蛇行してないこと。
  2. 胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)の血管内手術
    手術中の麻酔は、全身麻酔を原則としております。その理由は、実際はほとんどありませんが、術中トラブルによる開胸手術への移行の可能性を考えているからで、併存する他の病気のため全身麻酔のリスクが高い患者さまの場合は、硬膜外麻酔で行います。
    麻酔の導入が終了したら、一般的な外科手術に準じた方法にて、両側大腿部から下腹部まで術野を確保します。TEVARの手術では、鼡径部を走る動脈(総大腿動脈)よりカテーテルと呼ばれる管類を挿入していく為、初めに片方の鼡径部を切開して、鼡径部の動脈を露出します。
    血管内治療は、鼡径部の動脈にシースという管を挿入することから始めます。シースが挿入されたら、様々なガイドワイヤーやカテーテル類を鼡径部の血管に最小限のストレスで何回も挿入する事が可能となります。 まず、造影用カテーテルを胸部大動脈まで進めて血管撮影をしてから、実際に留置するステントグラフトのサイズを決定します。ステントグラフト本体の準備を終えたら、鼡径部の動脈から挿入して胸部大動脈瘤の中枢まで進めてから、ステントグラフト本体を展開していきます。 ステントグラフト本体の展開が終えたら、ステントグラフトを収納していたシステムを抜去して、鼡径部の動脈から出血しない様にサイズの大きなシースという管を挿入します。 ステントグラフトの展開及び留置が終えたら、バルーン付きのカテーテルを挿入して血管の内側より、ステントグラフトを圧着してから血管撮影を行って、大動脈瘤内への漏れ(エンドリークと呼ぶ)が無いかを判断します。 必要があれば、ステントグラフトを追加して留置する場合があります。手術の最後に、鼡径部の血管から管を抜いて、露出した血管壁を縫合して、皮膚を閉創します。
  3. 胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)後の経過
    血管内手術の当日は、術後に集中治療室でベッド上での安静になりますが、翌日からは病棟内を歩行可能となります。ステントグラフトが適切に胸部大動脈に留置されると、大動脈瘤内の血流が停滞して血栓化が始まるため、治療の翌日から熱発や倦怠感が生じる場合があります。 また、胸部大動脈の周囲に反応性に胸水が出現することも多く、左胸背部に疼痛や違和感が生じることがあります。但し、数日すると発熱は微熱程度に落ち着いて、倦怠感も回復してくるのが通常の経過ですが、胸水が消失するまでは時間を要するため、左胸背部の疼痛が遷延する場合があります。 鼡径部の傷も小さい為、創部の痛みも軽く、術後3日目からシャワー浴が可能となります。従って、経過が順調な場合は、治療後3日目にCT撮影を行って治療が予定通りに出来ているかを確認して、治療後4~7日で退院になります。
TEVER 手術前

TEVER 手術後

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