<看護師/リンパ浮腫セラピストが伝える>下肢リンパ浮腫の予防…
リンパ浮腫とは
手術の際のリンパ節郭清(がん細胞が転移している可能性のあるリンパ節も一緒に切除)により部分的にリンパ管が途切れたり、放射線治療によるリンパ管の破損などにより、リンパ管を通るはずだった老廃物や水分が皮膚の下にたまってむくみが生じる状態がリンパ浮腫です。
治療後、何年経過してもリンパ浮腫になる可能性があり、負担の積み重ね・炎症・誤ったケアなどをきっかけに 5~10年以上経過してから発症する方もいます。
部位・原因・症状
<部位>
下腹部、陰部、お尻、脚
<原因>
骨盤内リンパ節郭清
放射線治療
皮膚トラブル
<特徴的な症状>
ほとんどは片脚だけむくむ、両脚の場合も左右差がある
早期発見のポイント
□ 脚がだるい、重たいと感じる
□ 下腹部~陰部が全体的に腫れぼったい
□ ズボン、下着類がきつく感じる、跡が残る
□ 靴がきつい、履きにくくなった
□ 朝、起きても重だるさが取れない
日常生活でのポイント
リンパ浮腫予防で大切な事は以下の3点です。
「リンパ液の流れを妨げない」「使いすぎない」「炎症を起こさない」
■リンパ液の流れを良くする運動
全身のリンパ液はリンパ管に集められ、最後に左鎖骨の下あたりで静脈に合流して心臓に戻ります
①鎖骨を大きくゆっくり動かすようにして、肩の後ろ回し10回を1日に何度か行いましょう。
②お腹の太いリンパ管の運動を促進させる腹式呼吸5回を、1日に何度か行いましょう。
③背筋を伸ばして大きく手を動かして歩くことで、全身のリンパの流れも活性化されます。
適度な散歩をしましょう。
■ケガや感染に注意する
リンパの働きが悪い状態の脚が傷つき、感染・炎症などが起こるとリンパ浮腫が誘発されます
①爪は深爪にならないように切り、ささくれや甘皮は保湿クリームなどで手当てしましょう。
②水虫や湿疹、アトピー性皮膚炎など、皮膚の疾患は皮膚科に受診して治療しましょう。
③ペットに噛まれたり引っ掻かれた傷は、よく洗い流し、ひどい時は皮膚科に受診しましょう。
④虫に刺された時は、掻かずにかゆみ止めを使いましょう。
⑤ムダ毛の処理はカミソリを使わず、電動式の物を使用しましょう。
■蜂窩織炎(ほうかしきえん)
リンパ浮腫の患者さんの半数以上に発症する細菌感染です
皮膚が傷つくと炎症が起き、発疹ができたり全体に赤くなったりします。
また、38℃以上の発熱や痛みを伴うこともあります。
炎症をきっかけにリンパ浮腫を発症したり、浮腫が悪化することがあります。
①皮膚を傷つけてしまったら、すぐ洗い、傷の周りが腫れていないか確かめましょう。
②腫れがひかない場合は、できるだけ早く皮膚科に受診しましょう。
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■日頃のスキンケア
皮膚の健康を保つために清潔を心がけ、炎症リスクを抑えることが大切です
①保湿クリームやローションを塗って、 肌の乾燥や肌荒れを防止しましょう。
②外出時は長ズボンや日傘、 日焼け止めクリームなどで紫外線対策しましょう。
③こまめなシャワー浴や入浴を心がけましょう。 ゴシゴシこすらずに石鹸の泡で洗いましょう。

■下着や服装の選び方
ウエスト・足首など部分的に強く締め付けると、リンパ液の流れが悪くなります
①締め付けがきついショーツやガードルは避けましょう。
②靴はヒールが高いもの、つま先が狭いものは避け、靴下も締め付けないものを選びましょう。

■日常生活で避けたい動作
リンパの流れを阻害する動きに気を付けましょう
①長時間の正座や和式トイレは、脚のリンパ浮腫の原因になるので避けましょう。
②温熱カイロや温湿布、ホットカーペットなどの火傷に気を付けましょう。 火傷をしてしまったら、
すぐに冷水で冷やし、水ぶくれや皮膚がむけてしまった場合は皮膚科に受診しましょう。
■家事は無理をしない
家事の仕事量は少ないものではなく、無意識に行っている重労働は要注意です
①負担の大きい家事によってリンパ浮腫が起きることを家族に理解してもらいましょう。
②アイロンがけや調理による火傷に気を付けましょう。
③季節ごとの家事で負担が大きい重労働は、家族が手伝ってくれる日に行いましょう。
■スポーツや筋力トレーニング
適度な運動はリンパ液の流れをよくするのに有効ですが、疲れたら休むこと
①筋力トレーニングは有効ですが、脚を酷使するまでは行わないようにしましょう。
②脚が腫れたり、翌日まで疲れが残るような運動は避けましょう。
③運動後はシャワーなどで汗を流して着替え、皮膚の清潔を心がけましょう。

■体重管理や栄養バランス
末梢のリンパ管は皮膚組織にあり細いため、皮下脂肪が多いとリンパ液の流れが悪くなります
①肥満になるとリンパ液の流れを阻害するので、 標準体重を目安に体重管理しましょう。
②生活習慣病予防と同様、野菜不足に気を付けた 栄養バランスの良い食事を心がけましょう。

■旅行・長時間移動
外国旅行なども注意点を守れば問題ありません
①飛行機や電車などで長時間移動のときは、足首を動かしたり、 ときどき歩いたりしましょう。
②車での移動は、運転する場合も同乗する場合も、こまめに休憩して歩いたりしましょう。
③温泉など熱い湯での長湯、高温のサウナ、 岩盤浴はむくみを誘発するので注意しましょう。

■疲労と睡眠
疲労が続くとリンパ浮腫を起こしやすくなります
①疲れがむくみの原因になるので、十分な休息と睡眠で疲れを残さないように心がけましょう。
②足先を心臓より10㎝くらい高くするとリンパ液の流れが促進されるので、敷布団の下にクッションや
座布団などを使って傾斜を作り、睡眠中でも両脚を挙上しましょう。
高く上げ過ぎると脚のつけ根のリンパ液や血液の流れを妨げてしまうので注意しましょう。
③立ちっぱなしはむくみを誘発するので、休憩したり脚を上げたりしましょう。
④ストレスも大敵なので、気分転換によりコントロールしてリンパ浮腫の予防に役立てましょう。
受診の目安
リンパ浮腫は、起こる人と起こらない人、また、進行が早い人と遅い人など、一人ひとり違います
①手術や放射線治療を受けた医療機関で、リンパ浮腫の起こる可能性、注意事項、発症した時の対処法などを聞いておきましょう。
②リンパ浮腫は、他の病気がきっかけでも生じることを覚えておきましょう。
③朝、起きても重だるさが取れない場合やむくみが残るようになってきた場合は、早めに受診しましょう。
印刷可能なPDFもご利用ください
監修
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看護師/リンパ浮腫セラピスト
中山くみ子、渕辺有紀
参考:イラストでわかるリンパ浮腫-リンパ浮腫の予防・生活・セルフケア-、監修 廣田彰男、発行者 東島俊一、発行所 株式会社法研、2013年2月26日発行


