健康福祉委員会傍聴のご報告

請願書のゆくえ 健康福祉委員会傍聴の記

11月16日に「川崎市重症救急対応病院募集」に関する幸区町内会連合会の請願書の審議が、川崎市2号庁舎において、午前10時より開催され、石心会からは43名の職員が傍聴に参加いたしました。 結果は、採択にならず、継続審議となりました。継続審議の場合、本当に再度審議される保証はありません。事実上の不採択と考えたほうが良いでしょう。 当日の健康福祉委員会は全体として発言内容も低調で、とりわけ失望したのは、一旦採択に賛成した議員も最後には、川崎市地域医療審議会で審議を継続していることを理由に採択の意志を撤回し全会一致で継続審議になった事です。

地域医療審議会とはなにか?

地域医療審議会とは、市民の選んだ議員で構成する議会の上に位置する神聖にして不可侵の存在なのか?そんな疑問を持って調べてみたところ、 地域医療審議会とは市長の諮問に応じ、「地域医療に関する重要事項を調査審議し、その結果を答申する組織。 地方自治法の規定に基づき設置される機関とあり、いわゆる市長の諮問機関で、あくまで行政機関の一部に過ぎないことがわかりました。 一方、市民の選挙で選ばれ、行政機関の行き過ぎや不作為をチェックし、正すのが最も基本的な議会の役割なのですから、これでは、議会の自己否定であり、自殺行為であると言わざるを得ません。
近年、地方議会のあり方については、その低調な実態から投票率が著しく低く、そのため地方議会不要論から、名古屋市のように議員報酬の半減化、議員定数の削減まで全国で様々な議論が起きていますが、今回川崎市においてもその例外でなく、 極めて低調なる様子をまざまざと見せつけられ、そうした意見が的を射ている事が良くわかりました。

ここに注目!!

そうした中でも委員会で川崎市が配布した資料や発言に注目すべきものが少なからずありました。また、中には、一部議員の光った発言もあり、収穫は少なからずあったと言って良いでしょう。

  1. やはり幸区の住民が犠牲になっていた
    表1<当日配布資料> 平成23年川崎市消防局作成データよりこれは、自民党市議会議員 尾作均氏が指摘して注目を浴びた数値です。
  2. 重症救急対応病院の実現時期は1年間の遅れ
    表2<当日配布資料より>

    上記が当日示された重症救急対応病院決定の日程表です。
    市当局の説明によると、8月の審査時に22年度病床稼働率が85%の要件を満たせたのは、川崎幸病院のみ(95%)であった。満たせなかったもう一つの応募病院(仮にM病院83%.)が救済条項により、 今年度の実績を待っているのであるが、今後12月末の実績でもって審査し、年度の残りの3か月が100%であっても年度を通しての稼働率が85%に満たないとなればその時点で該当病院は幸病院のみとなる。 それがパターンAだというのである。しかしながら、その為には12月末時点でのM病院の病床稼働率が80%未満の場合に限るので過年度実績から見て現実性は極めて低く、実際にはパターンB、すなわちまるまる1年間の遅れとなるでしょう。 その意味で、Aパターンとは単なる建前だけで実効性のない前倒し案と言わざるを得ず、今年度の実績採用(救済条項)という変則的な募集要項を作った川崎市の責任*は重大であると言わざるを得ません。
    ※当初何度も、この変則的募集要項が、川崎市地域医療審議会の意向で作成されたと市当局は説明していましたが、のちに議員の説明に答えて原案は市当局が作成した事を認めました。

  3. 救急搬送の遅れは療養病床を増やしても解決しない
    席上、民主党市議会議員 東正則氏の「療養病床を増やせば、救急搬送の遅延は解決するのか?」との質問に、川崎市技官トップの坂本昇医務監が、 療養病床を増やしても救急搬送の遅延問題は解決しないことを初めて公に認め、救急病床を増やすことが本道であることを認めました。 これは、私達石心会が、あたかも療養病床を増やすことをもって救急搬送の遅延を解消する切り札のように言うのは危険だとして川崎市に対し提言していた事で、1歩前進した発言として評価したいと思います。 川崎市への提言は11月14日に行ったものですが、迅速に軌道修正された事は高く評価して良いでしょう。正に、「過ちを改むるにはばかる事勿れ」の格言通りで敬服に値すると思います。
    坂本医務監は続けて、「現状は病床数の決定権は一元的に国にあるがそこが問題であり、地域の実情に合わせて地方自治体が保健医療圏の基準病床を決めるべきである」との意見を表明しました。 しかしながら、あるべき論は別にして、私たちが国に接触した感触としては、国は病床過剰地域の増床に関しては県や市よりも柔軟な姿勢であるとの印象を強く持っています。そのような点はもう少し研究して改善してほしいと注文を付けておきたいと思います。

これからどうなるのか?

それでは今後、この問題はどのようになっていくのでしょうか?
今年度末に、M病院が85%の病床稼働率を達成したとして、一体川崎市はどのように病床の配分を決めるのでしょうか?
我々にとってM病院は互いに協力し合いながら共に地域医療を担っている仲間の病院です。
しかしながら、それでも今回の重症救急患者対応病院の指定を唯一川崎幸病院のみにして欲しいと要望している主たる根拠は次の通りです。

  1. M病院の所在地である中原区は病床過剰地域であり、幸区は全国でもまれな病床不足地域である。そのことで表1にも示されている通り現実に幸区の住民が犠牲になっているのだからまずは幸区の救急病床を優先してほしい。
  2. 病床稼働率85.3%の市立川崎病院の病床を削って、他病院に配分するならば、より稼働率の高い病院に配分するのでなければ筋が通らない。(M病院は83%)
  3. M病院は現在の病床稼働率(H22年度83%)を川崎幸病院並みの95%にすれば40床以上が浮いてくる勘定(許可病床372床のM病院は病床稼働率を83%→95%にすれば44床増える)。 この点からも、どうしても、許可病床を増やす必然性がない。まずは幸区の重症救急病床を増やすべきである。

川崎市は結局このような大義名分のない病床の配分を強行するのでしょうか?
ここに、川崎市健康福祉局の本音と思える迷言(?)があります。
日本共産党の市議会議員竹間幸一氏が、今回川崎市が公募参加資格を二重に引き下げた(実は国の基準は過年度実績で90%)理由を健康福祉局の幹部(あえて氏名は伏せます)に問い質したところ、 「救急患者が特定の医療機関へ集中する事による過剰負担の防止」「公募参加の門戸を広くしたいとの市地域医療審議会の意向が反映されたもの」と答えています。
これほど変な話はありません。
救急告示病院と言っても月にたった1台しか救急車が来ていない病院もあり、川崎幸病院のような地域的に病院病床が少ない地域にあって、「断らない救急」を実践している病院は救急患者が集中してベッドが足りなくなって困っているのです。 だから、今回の重症救急対応病院の募集は、(1)救急車受け入れ実績のある病院で、(2)ベッド稼働率の高い病院、更に(3)人的体制の整った病院に救急病床を配分して継続的に集中的に救急患者を引き受けてもらおうというのが趣旨のはずです。 これは、まさに特定の医療機関に集中的に救急患者を引き受けてもらおうという政策なのです。しかるに、「救急患者を特定の医療機関に集中させないようにする???」等とトンチンカンなことを当局の幹部が発言するとは、 竹間氏の質問がまさに痛いところを突いた為に頭が混乱した結果に違いありません。
更にこの幹部氏の発言で注目すべきことはここでもまた地域医療審議会をダシに使って自らの責任を回避しようとする姿勢が表れている事です。
以上の事から、今回、川崎市は大義名分のない病床の配分の責任を一義的に川崎市地域医療審議会に負わせて自らに追及が及ばないよう逃げ切ろうとしているのではないかとの疑惑が湧いて来ました。 そこまでして、私たちの要望に背を向ける背景には一体何があるのか?しっかり見極めねばなりません。

来たるべき川崎市長選挙を注視しよう!

上記のべたように、82,735人もの民意が軽くあしらわれて終わるならば、我々は、選挙民として行政の長たる市長選挙に於いて1票の権利を行使するしかないのかもしれません。川崎市の首長たる市長の選挙は2年後の2013年に行われます。
地方自治体の場合、国と違い首長が市民の直接選挙で選ばれるために、どうしても行政機関が強大な権力を持つことになります。今回の署名活動で結集した82,735人の民意はその意味で行政の首長=市長選挙に収れんさせていくしか他に手段がないのかもしれません。 現市長の阿部氏が当選した2年前の市長選挙は争点なき選挙と言われ投票率は36.09%と史上最低の低い数字でした。来たるべき選挙時には、現市長の阿部氏は自ら定めた多選自粛条例により不出馬となりますが、 次回は(1)幸区の救急ベッド不足の事態をどう考えどう対処するつもりか?もし、今回の政策決定の立場にある人が立候補したなら、(2)その時何をしたのか?を聞かねばなりません。 また次回はこの82,735人の民意を背景に川崎も話題になっている他都市同様の熱い選挙戦にする必要があるのかもしれません。そうしなければ、高齢者がもっと増えていく今後の人口動態から見て今よりずっと悲惨な状況が予見されるからです。

文責 本部事務局長 辻田征男