不整脈治療
不整脈について
『不整脈』とは、脈の異常の事を言います。不整脈には脈が速い、脈が遅い、脈が乱れるなどがあり、動悸、息切れ、ふらつき等いろいろな症状が含まれます。
脈は心臓から血液が送り出される事を意味しますが、脈が少なすぎると、心臓から血液が送り出す量が不足し、全身主に脳に行く血液の量が不足し、ふらつきやひどい場合には意識を失うことになります。また、脈が多すぎると心臓は空うちの状態となり、血圧も低下し全身や脳に十分な血液を送り出すことができなくなります。
そのような症状の中には、治療の必要がないものから、放置すると生命に関わるものまで幅広く、それを見極めるのが不整脈治療の第一歩です。
心臓のセルフチェック
「脈が飛ぶ」「脈が速くなる」一度は誰でも感じたことがあると思います。このような症状の中には、放置してもいいものから治療が必要な病気まで含まれます。では、どうしたらいいでしょう。まずは、自分で脈をとることが大事です。定期的に検診を受けることはもちろんですが、毎日の自己管理が重要です。
自分で決まった時間に毎日脈をとることが一番簡単な方法です。家庭血圧計で測る脈拍数でも得られる情報は多いと思います。正常の脈の数は、座った状態やゆっくりしてくつろいでいる時で、1分間に60回から80回程度です。(年齢により異なりますが、自分のいつもの脈の数はこんなものと知っておくことも重要です)脈はちょうどいい回数で、規則正しく打つのが正常です。
その他、最近では簡易ではありますが、家庭血圧計と同じように携帯心電計で心電図測定が可能になっています。またスマートフォンを利用したアプリ、デジタル腕時計といった心拍数を測定できるもので簡単に脈をとることもできます。
脈を自分で管理することで、脈の異常を早期に発見し、早期治療することにより命に関わる病気や脳梗塞に至らずに済むこともありますので、ぜひ試してみてください。
「自分で決まった時間に毎日」を習慣に 正常の脈:1分間に60回~80回 ※年齢により異なります。自分のいつもの脈数を知っておくことも重要です
最も治療対象になりうる『心房細動』とは!?
心房細動は、脈がバラバラに打つために脈が急に速くなったり、遅くなったりします。胸の違和感として感じ、しんどくなることが多いのですが、何も症状がない場合もあり、たまたま心電図をとって見つかることも少なくはありません。また症状がなくても、心房細動は脳卒中(特に脳の血管が詰まる脳梗塞)の原因となるため、高齢者や持病がある方は生命に関わることがあります。
カテーテル治療
脈が速い場合の治療としては、主に飲み薬(抗不整脈薬と呼ばれます)を中心とした薬物療法が一番に思い浮かぶと思いますが、最近では抗不整脈薬の副作用が問題になり、不整脈専門の医師は、どうしても必要な場合のみ薬物療法を行います。
それに代わる治療としては、カテーテル治療やデバイス(主にペースメーカーや植えこみ型除細動器など)を使った治療を適切に行っております。その中でも近年、最も進歩しているのがカテーテル治療です。
それぞれ長所と短所がありますが、うまく使い分けることで心房細動を2泊3日程度の入院で根本的に治すことが可能になってきています。治療時間も2−3時間で、眠っている間に治療することができ、治療に際してはなるべく苦痛を軽減するように努力しています。
またカテーテルアブレーションは、心房細動だけでなく、脈が急に早くなる病気や脈が飛ぶといった病気にも行うことが可能です。
「薬が多いので少しでも少なくしたい」「将来の脳梗塞が心配」「ついつい薬を飲み忘れてしまう」という方は、カテーテル治療を受けることをお勧めします。
経皮的心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)
従来、心房細動を含め不整脈といえば薬を飲んで治すということが当たり前でした。しかし最近では不整脈に対する薬は副作用や、だんだん効かなくなってくることが言われています。そこで根本的に心房細動を治しましょうという治療がカテーテルアブレーションです。
このカテーテル治療は、高周波カテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)と言われ、心臓の筋肉(心筋)の一部分を実際に焼き、余分な心筋の電気信号を途絶すると言うものです。
このように、動悸や息切れがある場合には、飲み薬を飲まずにカテーテルアブレーションで根治できるものもありますので、ぜひ主治医の先生に相談してみてください。
経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術(クライオアブレーション)
クライオアブレーションとは焼灼するのではなく、組織を冷凍凝固することで心筋組織に障害をもたらし、不整脈を治療するものです。
下のようなバルーンを肺静脈の入口に押しあてて、液体窒素を中に注入して冷凍凝固します。
ペースメーカー治療
心拍が正常よりも遅くなる不整脈(徐脈)についてはペースメーカーにより治療します。
以前は、ペースメーカーと言えば『MRIを撮れない』というのが欠点でしたが、今は条件付きではありますが、MRIを撮ることも可能になってきており、本体も小型化され寿命も長いものが使えるようになってきています。また当院では、ペースメーカーの状態を自宅にいながら病院で行うチェックとほぼ同様のチェックを行い、ペースメーカー異常の早期発見に活用できる遠隔モニタリングも導入しており、患者さんの日々の不安の解消に役立っています。
このように不整脈治療は日々進歩している領域ですので、今一度、動悸やふらつきなどの症状がある場合や、現在不整脈治療を受けているが他に治療法がないかと思われる方は、ぜひ不整脈専門の外来を受診してみてください。
カプセル型ペースメーカー(リードレスペースメーカー)
従来のペースメーカーの少ないデメリットの中にペースメーカー本体の出っ張りが気になる(特にやせた人は)ということがあります。その問題点を解消したのが、リードレスペースメーカーです。このペースメーカーはカテーテルを利用して、足の付け根から血管を通して、心臓の中に直接いれることができ、外からは全くペースメーカーが入っていることはわかりません。
当院では、このリードレスペースメーカーの植え込みを開始して、たくさんの患者さんにそのメリットを実感してもらっております。当然のようにMRIを撮ることも可能ですが、電池寿命が10年近くしかなく、電池が無くなればもう1つリードレスペースメーカーを植え込まないといけなくなり、適応となる疾患が限られるなど、現段階ではペースメーカー植え込みが必要になる患者さんの一部の人になりますが、利用可能になっております。
S-ICD (皮下植え込み型除細動器)
心臓にふれずに致死的不整脈をなおす?
心拍が正常よりも早まる不整脈(頻脈)のうち、心室頻拍、心室細動についてICDにより治療します。
命を一瞬でうばう致死的不整脈に対してAEDは広く普及してきておりますが、そのような致死的不整脈を持病として持っておられる患者さんに使用するICD(植え込み型除細動器)は従来血管の中にリード(電線)を入れて、
直接、心臓に電気ショックで治療するのは、一般的でした。
しかし現在は、血管や心臓に直接電線を入れることなく、電気ショックを行うことができる皮下植え込み型ICD(S-ICD)が利用可能になっております。これも疾患はかぎられますが、手術も比較的簡便で、体に負担をかけない治療となっております。
CRT-D (心臓再同期療法)
心不全予防・治療のためのペースメーカー?
CRT(心臓再同期療法)は、以前は心不全のかなり進んだ患者さんに使用してきた普通のペースメーカーに1本リード(電線)を追加して、心臓の壁の動きのずれ(心臓がシーソーのような運動をして、
心臓のポンプの働きの効率が悪くなる)を解消するために使用してきました。
近年は、心臓の壁の動きのずれ(左脚ブロックと診断された方など)により心臓のポンプの働きが悪くなっている患者さんは、早い段階でこのような器具を用いて心不全の予防を行っております。
心不全で入院を繰り返す前に、早期にこのような治療を選択することで、入院の機会が少なくなるメリットもあります。
治療から退院まで
心房細動 | 心室頻拍 心室性期外収縮 心房粗動 心房頻拍 |
発作性上室頻拍 | |
---|---|---|---|
治療内容 | 肺静脈隔離 (左房後壁隔離) (上大静脈隔離) |
不整脈回路の遮断 または 不整脈起源の焼灼 |
不整脈回路の遮断 |
治療時間 | 30分~120分 (治療部位により異なります) |
60分~240分 | 60分 |
退院後の内服 |
内服治療の継続 (抗不整脈薬を1~3か月内服) (胃薬を1カ月内服) |
症状によって処方します | なし |
通院 |
3か月後 その後かかりつけ医での通院 |
3か月後 | 3か月後 |
通院時の必要検査 |
24時間心電図 ※病状によって3か月以降も同検査を必要とする場合があります |
24時間心電図 ※症状によって3か月以降も同検査を必要とする場合があります |
心電図 |
遠隔診療(遠隔モニタリング)
最近では、病院に行かずに、自分の健康状態を管理すること、自宅に居ながら、病院での診察と同じような診察を受ける遠隔診療が勧められています。
このような機器で早期発見できるのが、一番に心房細動です。
当院では下記の方を対象に遠隔診療(遠隔モニタリング)を導入しています
- ペースメーカー
- ICD(植え込み型除細動器:AEDを同じような機能を搭載したペースメーカー)
- CRT(心臓再同期器療法:心不全治療を行うペースメーカー)
の植え込みを行っている患者さん
実績
治療実績(2019年~2023年)
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
カテーテルアブレーション | 465 | 508 | 447 | 313 | 391 |
ペースメーカー植え込み術 | 76 | 103 | 92 | 88 | 109 |
植え込み型除細動器(ICD) | 6 | 9 | 3 | 8 | 19 |
心臓再同期療法(CRT) | 7 | 9 | 9 | 5 | 28 |
治療費
2023.9月更新
検査・手術内容 | 入院 日数 |
請求予定金額 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
70歳未満 | 70歳以上 | ||||||
3割負担の 場合 |
一般 (1割負担) の場合 |
一般 (2割負担) の場合 |
現役並み 所得者 (3割負担) 区分Ⅰの場合 |
現役並み 所得者 (3割負担) 区分Ⅱの場合 |
現役並み 所得者 (3割負担) 区分Ⅲの場合 |
||
アブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術) | 3日間 | 約70万円 | 約6万円 | 約6万円 | 約9万円 | 約17万円 | 約26万円 |
ペースメーカー移植術 | 7日間 | 約45万円 | 約6万円 | 約6万円 | 約9万円 | 約17万円 | 約26万円 |
ILR(植込型心電図記録計移植術) | 2日間 | 約18万円 | 約6万円 | 約6万円 | 約6万円 | 約17万円 | 約18万円 |
※循環器科の手術に使用する材料はそれぞれ金額が高額な為、使用本数や種類により請求額に差が生じます。上記の金額は必要最低限の材料となっております。
高額入院費が予想される70歳未満の患者さまへ
限度額適応認定証の原本は入院当日にご持参ください。
医療費の自己負担分(一部負担金)が自己負担限度額以上になった場合に適応になります。保険者で手続きしていただくと、患者さまは保険診療分における自己負担限度額(食事代・個室代等は別途実費負担)のみを病院にお支払いいただき、差額分については保険者が病院へ支払う形になります。
申請等の詳細につきましてはクリニック・病院の窓口でもご説明させていただきますので受付でお声がけください。(70歳以上の方は申請は不要です)
外来受診のご案内
第二川崎幸クリニック 不整脈外来
アブレーション治療をご希望の方、不整脈が心配な方は第二川崎幸クリニック 不整脈外来へお越し下さい。
第二川崎幸クリニック
〒212-0021 神奈川県川崎市幸区都町39-1
午後診療/14:00~16:30
夕方診療/17:30~予約診療終了まで
土曜診療/ 9:00~12:00
休診日/日曜・祝祭日
第二川崎幸クリニック交通アクセス
https://saiwaicl-2.jp/access/
医療機関の皆様へ
当院では外来分離を実施しており、通常外来は川崎幸クリニック・第二川崎幸クリニックにてお受けしています。
川崎幸クリニック・第二川崎幸クリニックは完全予約制になっていますので、予約専用電話にてご予約ください。
※当日診療が必要な患者さんをご紹介いただく場合
救急で受診を希望の場合は、川崎幸病院の救急外来で対応いたします。まずは地域医療連携室に電話でご連絡ください。
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TEL044-544-4638(地域医療連携室直通)