子宮がん

子宮がん

はじめに

日本ではがん検診の効果が科学的に証明されている五つのがんを主要五大がんとしています。それは肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんです。 子宮がんは定期検診により、進行する前に診断(早期診断)が可能ながんです。早期診断された子宮がんの治療(早期治療)は、しっかりと治る可能性が高いです。 もし、定期健診で不幸にも子宮がんと診断されても、早期のものであれば、低侵襲な治療(傷が小さな治療)でしっかりと治る可能性が高いです。もちろん、進行しているがんでも、最近の治療法は進歩しています。 一般に治療は苦痛を伴いやすいですが、最近、様々な薬が開発されて、以前よりも治療が楽に受けられるようになりました。

子宮がんができる部位

子宮の構造は大きく子宮体部と子宮頸部に分けることができます。

子宮体部は球形に近い部分で、妊娠した時に胎児が育つ場所です。
子宮頸部は子宮体部の下のほうに続く、細長い部分で、腟に突き出しています。
子宮体部の中(子宮内膜)にできるがんを子宮体がん、子宮頸がんにできるがんを子宮頸がんといいます。

このように子宮がんは子宮体がんと子宮頸がんに分けることができます。
同じ子宮のがんでも子宮体がんと子宮頸がんとでは原因、発生のメカニズムは異なり、治療法も異なります。

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子宮がんの患者数

子宮頸がんと診断される人は20歳代後半から40歳後半までが多くなっています。
特に若年層の子宮頸がん患者数の増加が問題になっています。 子宮体がんと診断される人は40歳代から増加し、 50~60歳代の閉経前後で多くなっています。 近年、子宮体がん患者数は増加傾向で、 食生活の欧米化や出産経験がない人の増加が原因と言われています。

子宮がんの患者数
参考:国立がん研究センターがん情報サービス

子宮頸がんについて

子宮頸がんはどんな病気か?

子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で、このウイルスは性交渉により感染します。 子宮頸がんの患者さんの90%以上からこのHPVが見つかることが知られています。

HPV感染そのものはまれではなく、多くの場合は自分の免疫で排除されますが、 排除されないと感染が持続します。この慢性的な感染が刺激となり、 一部に前がん状態(がんになりやすい状態)や子宮頸がんが発生すると言われています。

若い人の子宮頸がんが増えている原因は、若い世代で感染の機会が増えているためと考えられます。

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子宮頸がんはどんな症状が出るのか?

初期の子宮頸がんは症状がありません。病気が進行すると、月経中や性交渉のときに出血があったり、おりものが増えたりします。進行すると下腹部の痛みが出ることがあります。

子宮頸がんの検査方法は?

子宮頸がんは正常な細胞から突然がんになるのではなく、 異形成(いけいせい)という前がん状態を経てがん化すると言われています。 このがんになる前の異形成を子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)で 早めに発見することができます。

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子宮頸がんの進行期と治療法

日本婦人科腫瘍学会が出版しているガイドラインに沿って治療します。
がんに対しての治療をする前にがんの広がりをしっかりと検査して病気の進行期を決めます。 子宮頸がん治療ガイドラインに従って科学的根拠に基づいた治療をします。

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ⅠA1期 肉眼では見えないがん、浸潤の深さが3㎜以内、広がりが7㎜以内
⇒子宮頸部円錐切除、または単純子宮全摘術や準広汎子宮全摘術+リンパ節郭清術
ⅠA2期 肉眼では見えないがん、浸潤の深さが5㎜以内、広がりが7㎜以内
⇒準広汎子宮全摘術+リンパ節郭清術、または広汎子宮全摘術+リンパ節郭清術
ⅠB1期 がんが子宮頸部に留まり、腫瘍径が4㎝以内
⇒広汎子宮全摘術+リンパ節郭清術
ⅠB2期 がんが子宮頸部に留まり、腫瘍径が4㎝を超えるもの
⇒同時化学放射線療法、または広汎子宮全摘術+リンパ節郭清術
ⅡA1期 腟への浸潤が認められ、腫瘍径が4㎝以内
⇒放射線治療、または広汎子宮全摘術+リンパ節郭清術
ⅡA2期 腟への浸潤が認められ、腫瘍径が4㎝を超えるもの
⇒同時化学放射線療法
ⅡB期 子宮傍組織への浸潤が認められるもの
⇒同時化学放射線療法、または広汎子宮全摘術+リンパ節郭清術
ⅢA期 腟への浸潤が下1/3まで達するもの
⇒同時化学放射線療法
ⅢB期 がんが骨盤壁まで達するもの
⇒同時化学放射線療法
ⅣA期 膀胱、直腸の粘膜まで浸潤があるもの
⇒同時化学放射線療法
ⅣB期 骨盤腔を超えて広がっているもの
⇒化学療法、または緩和的局所療法(手術、放射線治療)や緩和治療

子宮頸がんの最新の治療法は?

①強度変調放射線治療(IMRT)
従来の放射線治療と比較して、放射線を腫瘍へ集中させ、がん周囲の正常な臓器への放射線の線量軽減が可能になりました。これにより有意に合併症を減らすことができると言われています。

放射線治療について、詳しくはこちら
川崎幸病院 放射線治療センター 子宮がんページ

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②腹腔鏡手術

現在でも、子宮頸がんに対して行う腹腔鏡手術には保険適応がありませんが、 子宮頸がんに対する広汎子宮全摘が2014年12月1日から先進医療になりました。 開腹手術と比べ手術後の回復が早く、傷も小さいです。 当院でも、腹腔鏡での腹腔鏡下広汎子宮全摘術を2016年3月から開始しました。
腹腔鏡下広汎子宮全摘術についてはこちら

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子宮頸がんの予防は?

子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。 このHPVは性行為により感染するウイルスで、100種類以上のタイプがあります。これらのうち約13~15種類が子宮頸がんの原因になると言われています。なかでも、HPV16型と18型の2種類による感染は子宮頸がん全体の約70%の原因となることがわかっています。現在、この16型と18型のHPV感染を予防できるワクチン接種を受けることができます。ワクチン接種をうけても、100%予防することはできません。厚生労働省のガイドラインでは、20歳から2年に1回は子宮頸がん検診をすることが推奨されています。

子宮頸がんワクチンの問題点

平成25年4月から定期接種を勧奨されていたが、副作用が出現したため6月に一時中止勧告が出されました。世界保健機構(WHO)や世界産科婦人科連合(FIGO)からワクチンの安全性が報告され、日本産科婦人科学会など5団体が接種勧奨の再開を厚生労働省に求めています。ワクチンの詳細は厚労省のページ、費用はお住いの自治体(川崎市や横浜市など)ホームページを参照してください。

子宮頸がん治療後の経過観察について

治療終了後の経過観察の間隔として、1~2年目までは1~3か月ごと、3年目は3~6か月ごと、4~5年目は6か月ごと、6年目以降は1年ごとを目安にします。

子宮頸がんの5年生存率

日本産婦人科学会、婦人科腫瘍委員会が2015年6月に出した報告によると、子宮頸がん進行期別の5年生存率はⅠ期が91.8%、Ⅱ期が71.5%、Ⅲ期が53.0%、Ⅳ期が23.7%となっています。

子宮体がんについて

子宮体がんはどんな病気か?

妊娠したときに胎児が育つところが子宮体部で、ここにできるがんが子宮体がんです。 多くの子宮体がんの発生には女性ホルモン(エストロゲン)が関わっています。 このホルモンが高くなり、子宮内膜への刺激が強くなると、子宮内膜増殖症という 前がん状態を経て、子宮体がんが発生すると言われています。出産したことがない、肥満、月経不順のかたに発生しやすいが、これに関係なく発生するがんもあります。 最近増えているがんの一つです。

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子宮体がんはどんな症状が出るのか?

症状は不正性器出血(月経の時以外の出血)、水っぽいおりもの、血液が少し混じったおりもの、おなかの痛みがあります。がんからの出血が不規則な月経と間違えることもあります。何かいつもとは違う性器出血がありましたら婦人科を受診してください。

子宮体がんの検査法は?

子宮体がんの検査は子宮の中に器具をいれて、こすって細胞を採取する検査(子宮内膜細胞診)やつまんだり、削ったりして小さな塊を採取する検査(子宮内膜組織診)をします。痛みを伴うので麻酔をして検査することもあります。このような検査で子宮体がんと診断された場合はCTやMRI検査でがんの広がりを検査します。一般に子宮がん検査というと子宮頸がん検診のことで子宮体がんの検診は含まれないことが多いので注意が必要です。

子宮体がんの進行期と治療

治療前に病気の進行期を決定し、日本婦人科腫瘍学会が出版しているガイドラインに沿って治療します。

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進行期 治療法
Ⅰ期 がんが子宮体部にのみ認められるもの 手術は子宮全摘、両側卵管、卵巣切除、骨盤、傍大動脈リンパ節郭清が基本的となります。Ⅰ期のうちで初期のものはリンパ節郭清を省略したり、腹腔鏡手術をすることもあります。術後の病理検査結果で再発リスクを評価します。再発リスクがあれば手術後に化学療法や放射線治療をします。
Ⅱ期 がんが子宮体部を越えて子宮頸部に広がったもの
Ⅲ期 がんが子宮外に広がっているが、骨盤を越えて外には広がっていないもの、または骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの Ⅲ期とⅣ期は、患者さんの状態次第で治療法が変わります。手術が可能であれば、子宮全摘、両側卵管、卵巣切除、骨盤、傍大動脈リンパ節郭清を目標としますが、全身の状態が悪ければ縮小手術をします。手術後は化学療法や放射線療法を考えます。手術が不可能であれば、化学療法や放射線療法を考えます。
Ⅳ期 がんが骨盤を越えて別の部位へ広がるか、膀胱や腸の粘膜を侵すものか、遠隔転移のあるもの

子宮体がんの最新の治療方法は?

腹腔鏡手術
初期子宮体がんIA期に対する腹腔鏡手術が2014年4月1日から保険適用になりました。開腹手術と比べ手術後の回復が早く、傷も小さいです。

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子宮体がんの経過観察について

治療終了後の経過観察の間隔として、1~3年目までは1~3か月ごと、4~5年目は6か月ごと、6年目以降は1年ごとを目安にします。

子宮がんの検診

子宮頸がん検診

内診と視診、子宮頸部細胞診(子宮頸部の表面の細胞をブラシで軽くこすりとる検査)を行う検査です。痛みはほとんどありません。採取した細胞は顕微鏡で観察し、異常がないか診断します。この細胞診で異常があった場合は精密検査(スコープで病変部を拡大して観察し、異常な部位を狙って組織診をする検査)が必要になります。

子宮体がん検診

内診と子宮内膜細胞診を行う検査です。子宮内膜細胞診とは子宮内に細胞を採取する棒をいれて検査します。検査時は少しの痛みと検査後に付着程度の少量出血が時にあります。この検査で異常があった場合は精密検査(超音波検査や細胞診よりも大きな器械をいれて子宮内膜組織を採取する検査)が必要になります。

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