前立腺がん

がん情報:SAIWAI238
前立腺がん
前立腺と前立腺がん
前立腺は男性だけにある生殖器の1つで、ちょうど膀胱の真下にある臓器です。
前立腺がんとは
前立腺がんは前立腺にできるがんのことで、高齢者に多く、40歳代からみられ50歳以上で多くなります。また、食生活の欧米化、高齢化に伴う男性ホルモンの影響などにより、日本人に増えているがんの1つです。
前立腺がんの症状
前立腺がんの症状としては、排尿障害のほか、排尿痛、血尿、膀胱刺激症状などがありますが、自覚症状が現れるようになった時にはすでにがんが進行していることが少なくありません。
早期発見が大切です
前立腺がんは早期に治療すれば約90%の人が完治するといわれています。しかし、自覚症状がないため、早期発見が難しいがんです。そのため、定期的な検査が大切です。
PSA検査~PSA検査は前立腺がんの早期発見に有効な検査です~
PSAとは
前立腺から分泌されるたんぱく質の一種で、前立腺がんや前立腺肥大症など前立腺に異常があると大量のPSAが血液中に流れ出します。そのため、血液検査によりPSA値を測定することで、前立腺の異常を早期発見することが期待できます。
簡単な検査です
採血のみの検査ですので、身体の負担なく手軽に行えます。
40歳になったら検査を
一般的に50歳以上の男性が対象ですが、ご家族で前立腺がんにかかった方がいらっしゃる方については、40歳になったらPSA検査を受けることが推奨されています。
PSA基準値について
基準値
1.0ng/mL以下では3年に一度検査を、1.0ng/mL~基準値ですと1年に一度の検査が推奨されています。基準値以上の場合、専門医の受診が必要になってきます。「PSAが高い」といわれたら、前立腺がんの可能性があるので、泌尿器科専門医を受診していただくことを勧めています。
前立腺がんの治療法
前立腺がんの治療法には大きく、手術療法、放射線療法、内分泌療法、待機療法があります。
治療法の選択について
PSA値、がんの広がり、転移などの有無、患者さんのご年齢、患者さんの状態などを総合的に判断し、最終的には患者さん・ご家族の希望を優先して治療法を決めます。
前立腺がんの放射線療法について
放射線治療について
利点:
・手術と比較して、男性機能、尿路系機能に関する治療後のQOL(生活の質)が高い。
・ご高齢者、合併症(心疾患、糖尿病など)をお持ちの患者さんにも適用が可能。
・三次元原体照射やIMRTなど、高精度の放射線治療により治療成績の向上が期待できる。
欠点:
・治療期間が長い(7週間前後)。
・主な副作用として直腸障害(出血、潰瘍など)が生じる可能性がある。
※放射線照射技術の進歩により、正常な細胞への影響を最小限に抑えることが可能になっております。
放射線治療の方法
放射線を照射する範囲や線量は、放射線治療を行う目的や部位、広がりの程度によって異なります。照射は通常、週5回(月~金)、38回、7週間前後です。手順としては、最初に治療計画CTを撮影し、治療計画用コンピュータで線量を計算して、患者さんごとにもっとも適した線量の分布が得られるように事前に検証して照射が行われます。治療は原則として通院で行い、毎回の治療に要する時間は数分程度ですが、治療経過中、週1回は担当医による診察を受けていただきます。
IMRT:強度変調放射線治療
当院では、エレクタ社のシナジーという特殊な仕様の治療装置を導入し、前立腺がんに対して強度変調放射線治療(IMRT)という治療を行っています。
IMRTとは、専用のコンピュータを用いて照射ビーム内の放射線の強弱を調節し、照射ビームの形状を腫瘍の形に合わせて変化させて、多方向から腫瘍に照射する画期的な治療技術です。この技術により、がん細胞には集中的に放射線を照射し、がん細胞周辺の正常な組織には極力放射線があたらないようにすることを可能にします。
また、当院の治療装置は特殊な仕様であり、一般的なIMRTで1回数10分かかる照射が、当院の治療機種では約2分半で行うことできます。
照射に伴う副作用など
・ 放射線照射による急性反応(放射線治療中から終了後1~2か月)
尿道炎、膀胱炎:排尿時の違和感、疼痛、頻尿、切迫尿
直腸粘膜の炎症:排便時の違和感、直腸出血
肛門周囲炎:肛門痛
・ 晩期反応・晩期有害事象(放射線治療後半年から数年)
直腸潰瘍、直腸狭窄、萎縮膀胱
※これらの副作用は、治療を受けた方全員に見られるわけではありません。むしろ、いずれの症状も比較的まれなケースであり、照射していない部位には副作用は現れません。わたくしたち放射線治療センタースタッフも副作用を抑えたやさしい放射線治療を心がけております。
前立腺がんの手術療法について
前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、精巣がんなど患者さんのからだの負担を可能な限り軽減する低浸襲治療を一番に考え、がんに対する手術において腹腔鏡補助下小切開手術(MIES)に取り組んでいます。また当院では、腹腔鏡下小切開手術(ミニマム創内視鏡下手術)施設認定を受けています。
内分泌療法
前立腺がんは男性ホルモン(テストステロン)の影響を受けて増殖する性質があります。そのため、体内の男性ホルモン量を低下させたり、ホルモンの作用を抑制することで、がんの増殖を抑える効果が期待できます。この治療法を内分泌療法といい、手術療法や放射線療法と組み合わせて用いられることもあります。内分泌療法には、薬物療法と男性ホルモンをつくる左右の精巣を摘除する治療があります。
待機療法
がんの悪性度が低く、転移などがんの広がりが小さいと判断した場合には、PSA値が低く、直腸診や生検の結果からもがんの広がりが小さいと判断された場合は、PSA監視療法を治療選択肢の一つとして、専門医より提案されることがあります。
前立腺がんは、高齢者に多く、一般的に進行が緩やかなものも多いため、命に影響を与えないようなおとなしいがんであると診断された場合には、PSA値を定期的に観察する待機療法を選択することがあります。