大動脈解離(解離性大動脈瘤)
川崎幸病院 川崎大動脈センター センター長/大動脈外科部長 大島 晋
大動脈解離とは大動脈を構成する内膜、中膜、外膜の三層構造の内膜の亀裂から中膜に血液が入り込む病気です。症状としては中膜に血液が入り込む際に激痛を伴い、入り込んだ血液が移動することによって痛みの移動が起こります。 また解離した血管が主要臓器の分枝を閉塞させることにより臓器虚血を起こすこともあります。動脈解離を起こした血管は壁が薄くなり急性期には破裂、慢性期には動脈瘤を形成することがあります。
いったい、何が起ったのでしょうか?
大動脈解離は、簡単にいうと、大動脈の血管壁が裂けている状態です。裂けているといっても、破れているわけではありません。血管壁の内側の膜に亀裂ができ、内側と外側の膜の間に血液が流れ込んだ結果、血管を2重構造にしてしまうのです。
大動脈は心臓から始まり、全ての臓器に分枝血管を出して血液を供給しています
大動脈に解離がおこると、いずれ分枝血管に血液が流れなくなり、臓器の血流障害(虚血)がおこります。血流障害のおこる場所によって、例えば、心臓の虚血は心筋梗塞、脳の虚血は脳梗塞、腎臓の虚血は腎不全、腸管の虚血は腸管壊死、などなど、致死的な合併症を引きおこし、高い死亡率を呈します。このような動脈解離に対しては緊急手術で対応する以外ありません。