治療の基本
川崎幸病院 川崎大動脈センター センター長/大動脈外科部長 大島 晋
大動脈瘤は破裂してしまうと救命困難な疾患のため破裂前に予防的に治療することが基本になります。拡大した血管の交換または裏打ちを行い、破裂を予防する必要があります。
診断
大動脈瘤の治療は、正確な診断から始まります。当センターでは最新型マルチスライスCT装置により超高密度0.6mm間隔で撮影した画像を元に、大動脈瘤の場所、大きさ、形などを正確に診断します。
経過観察
大動脈瘤の大きさ、形などによっては、手術などの治療を行わず、定期的(多くは一年毎)に経過を診ていく場合があります。
ステントグラフト
最近注目されている治療法です。体に対する負担が少なく、入院期間も手術に比べて短いなどの長所があります。逆に、ステントが対応できないのもがあることや、手術に比べ確実性に劣るなどの短所もあります。当センターでは過去に数百例のステント治療実績を持ち、ステント治療を専門に行う血管内治療部門医師が担当します。
手術
手術治療は数十年にもおよぶ実績があり確実性・耐久性に優れた治療法です。また、すべての大動脈瘤に対して治療が可能です。しかし、ステント治療に比べ侵襲が大きく、体力の回復などに時間がかかるため入院期間が長くなります。また、高度な手術技術が必要なため、手術可能な施設が限定されます。
当センターでは、正確な診断をもとに、それぞれの専門家が患者さんひとりひとりに最も適した治療法を選択し、それを各部門のエキスパートたち(医師・看護師・臨床工学士・理学療法士・栄養士・心理療法士・医療コーディネーターなど)がいわゆるテーラーメイドの医療を実践しています。
ステント治療 | 手術治療 | |
---|---|---|
長所 |
体の負担が少ない 入院期間が短い 輸血が不要 切開創が小さい |
確実な治癒 耐久性に富む すべての大動脈瘤に対応 |
短所 |
確実性に乏しい 長期の治療成績が不明 ステントの対応できないものがある 高コスト |
高度な手術技術が必要 手術可能な施設が限定される 入院期間が長い |