治療目的と治療対象
動脈瘤治療の目的
動脈瘤の破裂に伴う重篤な合併症、あるいは死亡という事態を回避することが、動脈瘤治療の唯一のゴールです。
手術適応
動脈瘤では、胸部紡錘状動脈瘤に関しては最大径50-60mm以上、嚢状動脈瘤に関しては発見された時点を手術適応としています。腹部大動脈瘤に関しては最大径45-50mm以上を手術適応としています。ただし、大動脈弁手術時の45mm以上の上行大動脈、および先天性大動脈2尖弁を伴う40mm以上の上行大動脈も手術適応としています。動脈解離では、急性Stanford A型解離に関しては、血栓閉塞の有無にかかわらず緊急手術としています。
また、急性Stanford B型解離に関しては、
- 持続する胸部痛
- 大動脈径の拡大
- 臓器虚血の存在
- 破裂例
慢性大動脈解離に関しては、大動脈最大径50mm以上を手術適応としています。
手術適応外となる因子は、
- 高度意識障害
- 余命2年以内の担癌状態
- 術後も日常生活が期待できないADL
年齢
年齢に関しては手術を制限する因子とは考えず、日常生活に問題ない方に対しては、ご家族ご本人のご希望により、年齢の如何にかかわらず手術をおこなっています。
術前評価
呼吸機能:FEV1.0; 0.8L以上、PaO2; 60torr以上(room air)が必要です。
心機能:EF; 0.3以上、有意冠動脈病変に対しては、正中切開症例では同時CABG、左開胸症例はPCI/CABGを先行します。
腎機能:腎機能低下症・HDの有無を問わず手術可能としています。
長期ステロイド投与:手術可能としています。
最近の傾向
紹介患者さんの増加に伴い、いままでhigh riskと考えられていた患者さんが増加しています。重度の合併症を持たれている方、超高齢者、再手術あるいは再々手術例、ステント留置後の動脈瘤拡大例、切迫破裂や破裂例などです。 この傾向は、今までは手術不可能と診断されていたcaseが、手術可能であるとの再認識により、私どもに紹介されるようになったと考えています。