大動脈瘤について 詳細編

腹部大動脈瘤とは?

腹部大動脈瘤

川崎幸病院 川崎大動脈センター センター長/大動脈外科部長 大島 晋

腹部大動脈瘤とは腎動脈以下の腹部大動脈が拡大し破裂の危険を伴ったものです。腹部大動脈瘤は基本的には無症状ですが、破裂すると腰痛を起こすこともあります。腹部大動脈瘤は45ミリ以上で治療を考慮することになります。 治療方法は開腹による人工血管置換術とカテーテルによるステントグラフト留置術がありますが、近年はステントグラフト留置術の割合が徐々に増えている傾向にあります。ただし治療法は本人の年齢や動脈瘤の形態、その原因によって十分に検討される必要があります 。

定義・分類

腎動脈より末梢から総長骨動脈分岐部までの腹部大動脈に存在する大動脈瘤。

破裂頻度と統計

腹部大動脈瘤の年間破裂率

大動脈の直径 破裂率
40mm未満 0.3%
40mm~49mm 1.5%
50mm~59mm 6.5%
60mm以上 急激に危険性が増大する

症状

腹部大動脈瘤も胸部大動脈瘤と同様に、原則的に症状がありません。腹痛や違和感も腹部大動脈瘤の患者さんの訴えとして時々見られますが、大動脈瘤と直接関係のある場合は極めて稀です。 体のやせている患者さんなどでは、仰向けに横になった時などに、おヘソのあたりに拍動性の腫瘤(しこり)をご自身で触れることがあります。 大動脈瘤の破裂または切迫破裂状態では腹痛を認める場合が多くあります。特に破裂は激痛を伴い、ショックとなる場合があります。

治療方針

これまでは、最大径50mm以上を手術適応としてきましたが、最近は45mmで手術になる場合が多くあります。手術の危険性はほとんど無いため、超高齢者や合併症をもたれている患者さんでも、ほとんどの場合手術が可能です。

治療法

川崎大動脈センターでは、小切開(10cm以下)による手術をおこなっています。これまでの腹部大動脈瘤の手術は、腹部を20cmほど切開し、腸管を圧迫(あるいは移動)する手術をおこなっていたため、 術後、腸管の動きが悪くなり、食事の開始までに数日を要していました。小切開手術は腸管を移動させることが無いため、術後腸管の動きが悪くなることがほとんど無く、すぐに食事を開始することができます。 実際の手術は、全身麻酔下で腎動脈の遠位側で腹部大動脈を遮断し、大動脈瘤を切除した後、その部分に人工血管を移植します。実際に移植する人工血管の長さはおよそ10~15cmです。人工心肺装置は使用しません。 輸血もほとんどの場合必要ありません。手術時間はおよそ1時間半から3時間です。