胸部大動脈瘤の治療
川崎幸病院 川崎大動脈センター センター長/大動脈外科部長 大島 晋
胸部大動脈は大きく分けて基部、弓部、下行、胸腹部の4箇所に分類されます。それぞれの場所に主要臓器への分枝があり、その再建を含めた治療を必要とするため手術の内容も異なってきます。 このうち下行大動脈に関しては主要臓器への分枝が少ないためステントグラフトによる治療が可能な場合もあります。
上行大動脈瘤と弓部大動脈瘤は胸の正中部を切開し、人工心肺という器械を装着後、心臓を止めて手術をおこないます
この部位の動脈瘤は脳に行く血管の入り口に近いため、この手術でポイントとなるのは手術中の脳の保護方法です。私たちは、体温を下げて脳に血液を循環させる安全な方法で手術をおこなっており、現在、脳障害はほとんどおこっていません。この種類の動脈瘤手術時間は、およそ5~7時間で、入院期間はおよそ2~3週間です。
遠位弓部大動脈瘤や下行大動脈瘤の手術は、脇の下の肋間(肋骨と肋骨の間)からおこないます
この手術には、さきほどの人工心肺は使わず、血液を迂回させるバイパス回路を使い、心臓を動かしたままで手術を行います。手術時間は3~5時間程で、入院期間は2~3週間です。
手術映像ー弓部大動脈人工血管置換術ー
典型的な弓部大動脈人工血管置換術です。人工心肺を装着した後、体温を低下させ、循環停止としています。
その後、脳灌流を維持しながら、動脈瘤より末梢に人工血管を吻合します。連続吻合の上、全周にフェルトをつけた糸で補強していきます。頸部分枝を再建し、中枢側吻合を行って手術終了です。当センターではこれまで1200件以上の弓部大動脈人工血管置換術を行っています。
手術時間はおよそ5時間、術後は約2週間で退院となります。
※注意※ 実際の手術映像となりますので、ご気分の悪くなる可能性がある方はご注意ください。