救急科(救急センター)

‘突然’表れる疾患の症状・サイン

このページを解説したのは
髙橋 直樹 医師
救急センター長/救急科科長/救急部部長/
臨床研修センター副センター長

はじめに

当ERは当院の理念である「断らない医療」を実践しています。
「自分の大切な人に受診を勧められるERにしよう」というビジョンをスタッフ全員と共有し患者さんに向き合い、病気による苦しみから助けられるように全力を尽くしています。
救急搬送される患者さんのうち、特に専門性が高い脳卒中や心疾患では、専門医も含めたチームで対応しています。

脳卒中に対して

脳卒中の中でも特に脳梗塞は時間との闘いです。発症から治療開始までの時間が早いほど改善する可能性が高くなります。当院では、脳神経外科医と救急医に加え、看護師、救急救命士、事務職員と全職員で役割分担し、1秒でも早く治療開始できるよう取り組んでいます。

心疾患に対して

救急医による診察の結果、緊急治療が必要な心疾患が強く疑われる場合、すぐに心臓の専門医と連携します。特に心筋梗塞の場合は心臓カテーテル治療が必要となりますので、医師、看護師、救急救命士で協力しながら迅速に対応して治療室まで送り、専門医にバトンタッチしています。

頭 背中・肩 胸 手・足 顔 お腹

部位別・救急搬送の対象となる症状

脳卒中は、血管が破れる脳出血と血管が詰まる脳梗塞に分けられます。脳出血は出血がじわじわ広がるため、時間の経過とともに状態が悪くなっていきます。脳梗塞は一般的に、発症から4.5時間以内であれば血液の塊(血栓)を溶かす治療(rt-PA治療)の適応となる可能性があるので、次項でお話しする症状が表れた場合には様子を見ず、なるべく早めに受診してください。また、脳梗塞は自然に血流が再開することがあります。例えば、明らかに右半身の動きが悪いが、受診を迷っているうちに動きが戻った場合、「一過性脳虚血発作(TIA)」の可能性があります。近く本当の脳梗塞が起こるかもしれないサインですので注意が必要です。

突然おしゃべりができなくなる、呂律がまわらない、言葉を発しようとしても出てこない(失語)、顔の片方が動かない(麻痺)、よだれが口からこぼれる、眼の開け閉めに左右差がみられるなどの症状は、「脳卒中」の可能性があります。
言葉については、「ぱたか」と繰り返して口に出せるか確認してみましょう。ぱ行・た行・か行は言葉を作る脳神経の場所が異なります。突然それらのいずれかがうまく言えないときは、脳卒中が原因の構音障害かもしれませんので、早めに救急外来を受診しましょう。

胸・背中

突然または急に、今までに経験したことのない痛みや違和感が出るのは、心筋梗塞や狭心症で表れる危険なサインです。
肩やあご、のどにそれらを感じるという方もいます。また、突然ドンと胸の痛みがあり、治らずに広がる場合は心臓にある大動脈という大きな血管が裂ける(破れる)時の症状です。命に関わるため、すぐに救急車を呼びましょう。
心臓の血管も自然に血流が再開通することがあります。明らかに胸が締め付けられ冷汗をかいていたのに、数分後におさまった場合も、念のために受診をお勧めします。
背中に表れる症状としては、突然の痛みです。動いた時のみ痛みが増強する場合は、多くが筋骨格系の炎症が原因であり緊急性はありませんが、安静状態でも痛みが強く、動いても痛みが変わらない場合は、内臓の病気(特に血管や尿管の詰まり、膵臓の病気)の可能性も考えられ、急を要する危険なサインの場合もあります。

お腹

突然の痛みに加えて冷汗を伴う場合は緊急を要する疾患のサインの可能性があります。
特に、背中を丸めないと痛みが強く歩けない、ちょっとした振動で痛みが増強する場合は、「急性腹症」といって炎症が広がっている可能性があり、緊急手術を要することもあります。
お腹にはたくさんの臓器があり、「急性腹症」の原因は様々です。血管が原因であれば「腸間膜動脈閉塞症」や大きい血管であれば「大動脈瘤破裂」や「大動脈解離」などがあります。また腸が原因であれば「虫垂炎(盲腸)」や「腸閉塞」、「消化管穿孔」、その他、卵巣や卵管、尿管などのトラブルでも起こり得ます。突然の冷汗を伴う痛みで歩けない場合は早めの受診をお勧めします。

手・足

しびれや脱力が突然表れた場合、前述の「脳」の病気に関連する可能性がありますので注意が必要です。

発熱

発熱をきたす疾患は多岐に渡りますが、急な発熱の多くが感染症です。感染症には大きく「ウイルス感染」と「細菌感染」があります。発熱だけでなく、鼻水、のど、咳、だるさ、など同時期に2つ以上の臓器に症状が出ている時は、「ウイルス感染」(いわゆる風邪)が原因のことが多く、焦らなくても良いでしょう。ほとんどのウイルスに特効薬はなく、多くの場合は自分の免疫で自然に治ります。ただし、ぐったりしている、意識が朦朧とするなどの場合は、すぐに受診しましょう。
一方、「細菌感染」の場合は、治療(抗生物質投与)をしないと悪化することがあります。特に糖尿病の方、免疫抑制剤を飲んでいる方は要注意です。発熱に加えてガタガタと震え(悪寒戦慄)、呼吸が速い、意識が朦朧としている場合は、命に関わる細菌感染(敗血症)に至っていることがありますので、すぐに受診し検査を受けましょう。

診療実績

救急診療実績 2021年(1月~12月)

外来患者総数(人/年) 28,817

救急外来受診患者数(人/年)

14,675 (50.9%)

(人/日)

40.1

うち、救急車搬送件数(件/年)

8,871 (60.4%)

うち、Dr.Car出動件数(件/年)

557 (3.8%)

うち、独歩来院患者数(人/年)

5,247 (35.8%)
入院患者数(人/年) 10,247

うち、緊急入院患者数(人/年)

4,138 (40.4%)
手術件数(件/年) 5,034

うち、緊急手術件数(件/年)

1,163 (23.1%)
川崎幸病院 救急搬送受入件数推移

医師プロフィール

髙橋 直樹

髙橋 直樹

救急センター長/救急科科長/救急部部長/臨床研修センター副センター長

略歴

  • 産業医科大学医学部医学科卒業
  • 宮崎県立宮崎病院 初期研修医
  • 宮崎県立宮崎病院 循環器内科
  • 産業医科大学病院 救急科
  • 関東労災病院 救急集中治療科 医長
  • 川崎幸病院 救急部 副部長

認定資格等

  • 日本救急医学会認定 救急医学専門医
  • 日本内科学会認定 総合内科専門医・指導医
  • 日本抗加齢医学会 抗加齢医学専門医
  • 社会医学系専門医協会認定 社会医学系専門医
  • 厚生労働省認定臨床研修指導医
  • 日本医師会認定産業医/産業医ディプロマ
  • 日本内科学会認定JMECCインストラクター・コースディレクター
  • 日本救急医学会認定ICLSインストラクター・コースディレクター
  • 日本外傷診療機構認定JATECインストラクター

多田 勝重

救急科医長

認定資格等

  • 厚生労働省認定臨床研修指導医
  • 日本感染症学会感染症専門医
  • 日本救急医学会救急科専門医
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本集中治療医学会認定集中治療専門医
  • ICD認定協議会認定ICD

伊藤 麗

救急科医長

略歴

  • 東京大学医学部医学科卒業
  • 東京大学医学部附属病院
  • 太田西ノ内病院
  • 東京大学医学部附属病院
  • JR東京総合病院
  • 川崎幸病院

塩島 裕樹

救急科医長

保富 亮介

救急科医師

野城 美貴

救急科医師

𡈽井 奏子

救急科医師

略歴

  • 昭和大学医学部卒業
  • 公立昭和病院
  • 独立行政法人国立病院機構 横浜医療センター
  • 神奈川県立 循環器呼吸器病センター
  • 横浜市立大学附属病院
  • 国家公務員共済組合連合会 平塚共済病院
  • 横浜市立大学附属 市民総合医療センター
  • 茅ヶ崎市立病院
  • 川崎幸病院

認定資格等

  • 日本救急医学会認定 救急専門医
  • 日本専門医機構認定 麻酔科専門医
  • 日本麻酔科学会認定 麻酔科指導医
  • 厚生労働省認定 麻酔科標榜医

白澤 祐二

救急科医師

略歴

  • 大田病院
  • 日本医科大学付属病院
  • 世田谷中央病院
  • 東京高輪病院
  • 川崎幸病院

東 康晴

救急科医師

略歴

  • 和歌山県立医科大学医学部医学科卒業
  • 和歌山県立医科大学医学部附属病院
  • 和歌山県立医科大学第一外科学教室
  • 国立病院機構南和歌山医療センター
  • 豊見城中央病院
  • 大浜第二病院
  • 小禄病院
  • 川崎駅東口内科クリニック
  • 川崎幸病院

認定資格等

  • 日本外科学会外科専門医

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救急医療 熱中症

【救急医が伝えたい】熱中症の話

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