偉大なるTの字

今日、当院に見学に来た学生と話をしている中で、自分が医学部の1年の時に体育学の教授から言われたことを思い出した。その言葉は、医師は「偉大なるTの字」のごとくあれということだ。その当時は偉大なる低能児とおもしろおかしく話していたが、未だに覚えているところをみると、その言葉の意味の理解が時とともに深まったということだと思う。
Tの字の意味は、こうだ。Tの字は横に広がる一本の線と垂直に降りる縦の線からなっている。横に広がる線は、幅広い知識、教養をさし、縦の線はある領域では深く探求し、ゆるがぬ専門性の獲得、人間の幹を形成することを意味している。
大動脈外科では、まさにこのTの字が必要である。外科医は縦軸に相当する手術の専門性に深く精通していなくてはならないし、一方では、患者さんの全身を見る幅広い横軸も必要としている。また、患者さんとの信頼関係もこの両者の軸がなくては成り立たない。40年経っても覚えている一つの言葉である。

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