特有な合併症として、エンドリーク(動脈瘤内に血流が残ること)、ステントグラフトの移動などが稀にみられることがあります。言い換えれば、治療したはずの大動脈が拡大・破裂する危険性もゼロではありません。そのため、治療後もCT等による追跡調査が必須であり、追加の治療(ステントグラフトの追加・開胸や開腹手術)が必要になる場合もあります。
特有な合併症として、エンドリーク(動脈瘤内に血流が残ること)、ステントグラフトの移動などが稀にみられることがあります。言い換えれば、治療したはずの大動脈が拡大・破裂する危険性もゼロではありません。そのため、治療後もCT等による追跡調査が必須であり、追加の治療(ステントグラフトの追加・開胸や開腹手術)が必要になる場合もあります。
ステントグラフトとはステントといわれる金属でできたバネの部分をグラフトと言われる人工血管で被覆したものです。これを血管の中に留置することにより、瘤に直接的に血圧がかからないようになり、破裂の予防を行うことができます。ステントグラフトは折りたたんで、直径7-10mm程度のカテーテル内に収納し、足の付根から動脈内にカテーテルを入れ、放射線イメージをみながら胸部や腹部の動脈瘤の部分に留置します。
この方法だと両脚の付け根(ソケイ部)を数cm切開するだけで治療が行えるため、胸部や腹部を大きく切開する必要がなくなり、患者さんの体に対して、より少ない負担で動脈瘤の治療ができるといわれています。
偽腔閉塞型(早期血栓閉塞型)のA型急性大動脈解離
以上の理由により、合併症を持つものは緊急手術、大動脈径が50mmを越えるもの、形態に変化を認めるものなどが手術となります。
発生数(厚労省概算) | 9000-10000人(年間) |
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手術件数(日本) | 2500-3300件(年間) |
年齢別発症のピーク | 大動脈解離 男女とも50-70歳代 |
発症時期 | 夏場に少なく、冬場に多い。午前中に多い |
手術適応とならない場合の治療については、保存的治療を行います。
保存的治療は大動脈解離リハビリテーションプログラムにのっとり、約3週間から4週間をかけて徐々に運動量を上げていくリハビリテーションを行います。
急性期 | 血圧の目標値は100~120mmmHg(上)とされているが科学的根拠は無い。 |
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慢性期 | 血圧の目標値は130mmmHg(上)とされているが科学的根拠は無い。 日常生活に関しての制限はほとんど無い。 運動制限が必要であるという科学的根拠は無い。 |
以下の死亡率が手術を行うかどうかの根拠となっています
死亡率 | 保存治療 | 手術治療 |
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急性A型大動脈解離 | 55.9% | 26.6% |
急性B型大動脈解離 | 9.6% | 32.1% |
※つまり、保存療法(手術をしない)場合と手術治療を行った場合との死亡率を比較した場合、急性A型大動脈解離では手術治療の方が死亡率が低い(26.6%<55.9%)ので、手術治療となります。また、急性B型大動脈解離では保存治療の方が死亡率が低い(9.6%<32.1%)ので、保存治療となります。
時期と病型により治療方針が決まります。
手術が必要な状態とは以下のような場合です。
急性A型大動脈解離 | 緊急手術 |
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急性B型大動脈解離 | 瘤径が5cm以上・分枝の血流障害・切迫破 |
慢性A型大動脈解離 | 瘤径が5cm以上 |
慢性B型大動脈解離 | 瘤径が5cm以上※ |
瘤径が5cm以下の慢性大動脈解離は、発症後、3ヶ月、6ヶ月、1年、1年6ヶ月、2年、以降は1年毎にCTによる経過観察をおこないます。大動脈最大径が50mm以上となったら手術を考えます。
約70%~80%に胸背部痛があります。
手術を行わない場合(未治療の場合)の急性大動脈解離での合併症は発生率は以下のとおりです。
狭心症・心筋梗塞 | 3-7% |
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脳虚血 | 3~7% |
上肢虚血 | 2~15% |
下肢麻痺 | 4% |
腸管虚血 | 2~7% |
腎障害 | 7% |
下肢虚血 | 7~18% |
A型急性大動脈解離 | 手術をおこなわなかった場合の死亡率は、発症より24時間以内が20%、48時間で30%、1週間で40%、1ヶ月で50%が死亡する。 解離の偽腔は将来瘤化する可能性がある。 遠位側の偽腔が閉塞する率は、10%以下。 |
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B型急性大動脈解離 | 手術をおこなわなかった場合の死亡率は、1ヶ月で10%以下。 |
B型慢性大動脈解離 | 大動脈瘤拡大の因子は、1:動脈径40mm以上、2:偽腔に血流が存在。 |