日本の場合は患者が医者や看護師に”お礼”(いわゆる金品贈与)をする風習がある。
どこの病院も建前では禁止しているが、実際はほとんどの医者が患者からの”お礼”を受け取っている。もちろん僕もその一人だったが、それは患者やその家族が感謝してくれて、わざわざデパートなどに行って買ってきてくれた商品券を突っ返すのも忍びないという気持ちからだった。それに、差し出された”お礼”を断ると、患者に対して「オマエのやっていることは良くないことなんだぞ!」と説教しているようで気分の良いものではない。しかし、やはり罪悪感があった。そうだ、自分のポケットに入れるのは良くないが、医局の本を買ったりするのなら許されるのでは・・、と思ったこともあったが、結局自分のところに戻ってくるわけで同じことだった。”お礼”を受け取った後は必ず自分の卑しさに気付き、何とも言えない気持ちになる。
ところがある策を講じて以来、患者からの”お礼”が全くなくなった。その方法は、外来で医師の診察が終わった後に、事務員が入院や手術の説明をするのであるが、その時に「お礼辞退」の話をすべての患者にすることにしたのである。
ポイントは話の内容だ。ただ、禁止されているからダメとっても効果はない。
ウチではわざわざこう言わせている。
「当院ではお礼は禁止されています。職員がお礼を受け取った場合、医師・看護師を問わず、すべて懲戒処分(減俸)対象となりますのでくれぐれもご注意いただきたいと思います」。
患者は医者や看護師に迷惑をかけてはいけないと考えるのか効果は絶大であり、この7年間、”お礼”はゼロである。
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