大動脈疾患の治療に求められるのは、一過性ではない『持続性』だ— Morad教授を迎えて

先日、当センター(KAC)にMorad教授をお招きしました。教授と共に症例を振り返る中で、私たちは改めて「患者さんにとっての真の利益」について深く考えさせられました。

「治った」はずなのに、なぜ?

先日、ある患者さんが運ばれてきました。 その方は以前、別の病院で「TEVAR(ステントグラフト内挿術)」治療を受け、「もう治りましたよ」と言われていたそうです。

しかし、現実は違いました。 大動脈瘤は80mmという破裂寸前の大きさにまで膨らんでおり、一刻を争う緊急の開胸手術が必要な状態だったのです。

– 技術が悪いわけではありません

ステントグラフトという治療自体は素晴らしいものです。体に負担が少なく、適切なケースで使えば非常に高い効果を発揮します。

問題は、デバイス(道具)の性能ではなく、

「その患者さんに、本当にその治療が合っていたのか」

という判断のプロセスにあります。

「できる治療」と「すべき治療」は違う

特に若い患者さんや複雑な病状の方の場合、目先の「負担の少なさ(カテーテル治療)」だけで選んでしまうと、数年後に再発や悪化を招くリスクがあります。

医療の世界には、こんな言葉があります。 「できること(Can do)」が、必ずしも「すべきこと(Should do)」ではない。

カテーテルで「何とか治療できてしまう」からといって、それが「一生安心できるベストな選択」とは限らないのです。

私たち医師に求められるのは、自分の施設でできる治療を無理に勧めることではありません。

「この患者さんには、もっと確実な手術ができる専門センターでの治療が必要だ」と判断したとき、迷わずそこへ橋渡しをする「紹介する勇気」こそが、本当の「患者さん中心の医療」だと私は信じています。

私は年間600例もの大規模な外科手術(開胸手術)を通して、この教訓を何度も、痛いほど学んできました。

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